『38カラット・コレクション』 プリファブ・スプラウト 1999年
世の中の評価と自分の感性が合わないことがあります。
もちろん世の中の評価や販売実績には広告などの力も作用しますから、純粋に商品の力だけが実績としてあらわれるわけではないのですが、それを含めても、自分は大丈夫かなと心配になったりするわけです。
プリファブ・スプラウトは、パディ・マクアルーンという稀代のポップ・センスを持ったアーティストを中心にイギリスで結成されたバンドです。
彼の曲作りは非常に高く評価されていましたので、この良さが分からないやつは音楽的センスのないやつだと思われてしまうほどでした。(後半は言い過ぎです。)
80年代の私は、こうしたポップさを上手く評価できずに、もっとエッジの立ったものを探しまくっていました。
「ペイル・ファウンテンズは本質的で心に響くけれど、プリファブは表層的なファッションだ」という感じです。
この『38 carat collection』は、バンドのデビューからレコード会社を移籍するまでに発表された6枚のアルバムから、38曲をセレクトした編集盤です。
発表されたそれぞれのアルバムに思い入れがあるような同時代を歩んだファンでないならば、プリファブ・スプラウトを知るにはお買い得です。
改めて聴いてみて、やはり曲作りのセンスは素晴らしいですし上手いなぁと感じます。(昔より素直になりました。)
ジャンルで言うとロックというよりもポップスになると思います。
ただ、アイドルが歌うようなポップ・ソングではなく、ジャズやソウル、ニューウェイブなど様々な音楽を程よい加減で取り入れて上質なポップスに仕上げられているのです。
良いメロディを、良いアレンジで聴かせてくれます。
いつどこで流れていても、シーンに溶け込んで居心地の良い音空間を提供してくれます。
個人的には今聴き直しても特別に評価が高まるということはありませんでしたが、これは当時から私がズレているだけなので気にしなくて大丈夫です。
出来の良い曲が詰まったアルバムであることは間違いありません。
サカナクションとかゲスの極み乙女とか、最近の日本の音楽オタクっぽいバンド(めちゃ褒めてます)は、プリファブ・スプラウトの子供たちのようです。
今の日本の音楽シーンが好きな人は、かつての偉大なソング・ライターの作品として聴いておくことは価値があるでしょう。きっと気に入ると思います。
Spotifyでの表記は1983年の作品となっていますが、おそらく1999年ですね。
配信では、レーベルに所属するデビュー前の曲『Lions In My Own Garden』が聴けなくなっています。それで、タイトルも『The Collection』(38carat が抜けてる)になっているのですね。
気に入った気になる方はCDを買いましょう。
投稿:2020.4.29
編集:2023.10.28
Photo by Oliver Ragfelt – Unsplash