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『Absolution』 MUSE

『アブソリューション』 ミューズ 2001年

急成長する彼らの人気と実力に、商業的な成功ももたらしたアルバムです。
CDの帯には、「過剰なまでのドラマティック・サウンド、第3章開幕。」とあり、音楽的な特徴を見事に言い当てています。

基本的には前2作「Showbiz」「Origin of Symmetry」のスタイルと同様で、プログレッシブ・ロックにも通じるような抒情的な楽曲がオルタナティブなサウンドに乗せられて展開します。
老若男女、いつでも、どこでも、皆にハッピーを届けたい、なんてことは露ほども考えていないでしょう。

マシュー・ベラミーの歌声からは、触れたら壊れてしまうか、こちらが傷つけられてしまいそうな、ヒリヒリした感受性が伝わってきます。
彼のギターは、これが身を守る唯一の武器であるかのように、鋭利な刃物のようなエッジを立てて鳴り響きます。
クリス・ウォルステンホルムのベースラインは、正気と狂気を行ったり来たりしながら必死にこの世界とのバランスを取ろうとしているかのようです。
ドミニク・ハワードのドラムスは、崩壊に至る危険水域を上げたり下げたりしながら音楽を導き支えています。

今回のアルバムは、前作同様に激しいロック・サウンドをベースにしながらも、美しいバラードやインスト曲、オーケストラの導入などのアイデアも取り入れて、バンドとしての深みが増した作品となっています。
前作との好みが分かれるのもまた、そういった面にあると思えますが、一般的には、収録曲に緩急が付けられたことで、アルバムとしての完成度や芸術性も高まったと評価されるのではないでしょうか。
個人的にはバンド感のある前作も好きなので、ちょっと控えめな言い方になってしまいましたが、このアルバムは傑作です。

演奏のクオリティも凄まじく、彼らの代表曲でもある5曲目「Stockholm Syndrome」や8曲目「Hysteria」は、3人バンドのアンサンブルが堪能できます。
どうしてもギターと歌に意識が向きますが、これらの曲はベースもドラムも尖がっていて素晴らしくカッコイイです。

アルバムは、苦悩の中にありながら、達観したり諦めたりはせず、あがき続けている痛みに満ちています。
それがパワーとなり、心を揺さぶります。
アルバムタイトルにあるAbsolution(赦免)は、いつ訪れるのでしょう。
最後の曲「Fury」のキング・クリムゾン級のヘビーな音を浴びながら、まだこの苦悩の物語は終わらないのだと感じてしまうのでした。

その後、エレクトロなどを取り入れながら進化して人気バンドとなる彼らですが、ミューズを好きになったのはこのアルバムがあったからです。
私にとってのミューズは、このアルバムです。

投稿:2020.9.25
編集:2023.10.31 

Photo by  Daniel Polo

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