『グー』 ソニック・ユース 1990年
このアルバムが発売された時、音楽シーンの中心は、アメリカだったように思います。
マドンナやマイケル・ジャクソンらの人気は絶頂で、マライヤ・キャリーなど後の大物もこの頃に多くデビューしています。
しかしそうしたメジャー・シーンの裏で、イギリスではブリット・ポップやシューゲイザーなど、非常に魅力的な音楽が生まれていました。
(私の大好きなアーティストが沢山います!)
そして、実はアメリカでも最高にクールなインディーズの動きがありました。
いわゆるオルタナティブ・ロックというやつです。
オルタナティブという概念は、この時代に限らず、既成のジャンルで括りにくいロックを指して使われていたように思います。
そして別のジャンル名でうまく括れるようになると、また新しく括りにくいものをオルタナティブと呼ぶような使われ方です。
この時代の北米のオルタナティブ・ロックのバンドは、グランジと形容されるようになることも多いようです。
ソニック・ユースは、ニューヨーク出身で1980年初期にはインディーズで活動を始めていたポスト・パンク世代のバンドです。
この『Goo』と言うアルバムは彼らのデビュー・アルバムと言われていますが、それはメジャーなレコード会社と契約して出した1枚目という意味で、デビュー前にキャリアはしっかり積んでいました。
ノイジーなギターを激しくかき鳴らし、メロディーが失われるほどに叫ぶ(時には朗読のような)ボーカルは非常に刺激的で、ニルヴァーナなど多くのフォロワーを生みます。
彼ら自身は、メジャーからデビューした後も、商業的な成功には縁がなかったようですが、多くのティーン・エイジャーはソニック・ユースに共感し、彼らに憧れてガレージに集まったのではないでしょうか。
なんとなく、60年代のニュー・ヨークでロックとアートに大きな影響を与えたヴェルヴェット・アンダーグラウンドのようです。
このアルバムは、ソニック・ユースの持つ衝動が、非常に魅力的な形でまとめられています。
若さ、激しさ、毒、芸術性がヒリヒリした音に乗って吐き出されてきます。
アルバム全体が曲も演奏もぶっ壊れていて、たまらなくカッコいいのです。
今、改めて聴くと、その音楽性の高さも素晴らしいと思えます。
当時チャートを賑わかせたメジャー・シーンのヒット曲は今となっては懐メロになってしまいましたが、このアルバム『Goo』に収められた楽曲は、現代の若いリスナーにも訴える力を持っているのではないでしょうか。
投稿:2020.4.22
編集:2023.10.28
Photo by Matt Seymour – Unsplash