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『KINGDOM COME』KINGDOM COME

『キングダム・カム』 キングダム・カム 1988年

ここ数日、レッド・ツェッペリン解散後のジミー・ペイジロバート・プラントを聴いて、「やっぱり現役の頃がいちばん」と身も蓋も無い結論に達してしまったわけですが、2018年にグラミー賞を受賞したグレタ・ヴァン・フリートというバンドには心を奪われました。まるでZEPが蘇ったようだったからです。
でも、今回のテーマは80年代にデビューした、キングダム・カムです。

最近は、誰が歌っていて誰が演奏しているのかよく分からないことがありますが、昔は音を聴いただけで誰なのかが分かる、個性的なアーティストが数多く存在していました。
憧れのアーティストを真似るというのは若いミュージシャンにとっての常とは言うものの、変に似すぎてしまうと、偽物扱いされて評価が下がることもありました。
実はこのキングダム・カムは、「ZEPに似ている」ということで物議を醸してしまったバンドなのです。

バンドの正式なデビュー前に音源がラジオで流れてしまい、「ZEP再結成か?」などの噂が先行する中で正体が明かされたとの話しがあります。
話題性があったので、注目されたのは良いのですが、グレタ・ヴァン・フリートと違って、批判を受けるようになってしまいます。
ZEP解散後の余熱は、まだちょっと燃料を投下すると炎上するくらいには熱かったのです。

バンドはその後も長く活動し、ZEP寄りなイメージを払拭しようと音楽的な変化にもチャレンジしたのですが、一度付いてしまった”ZEPの偽物”というレッテルはなかなか拭い去ることができず、2016年頃にメジャーな活躍は終わってしまいます。

このデビュー・アルバムは、確かにZEPに似ていると感じますし、そこが魅力だと言っても差支えないと思えます。
バンドの音は、この時代のハードロック・バンドの主流にあると思えます。
似ているポイントは何と言っても、レニー・ウルフの歌いまわしやボーカルへのエフェクトのかけ方、そしてところどころに感じる作曲センスです。
1曲目を聴いて「似てるな」と気づき、2曲目で「でも新しいバンドだな」と納得し、3曲目で「あー、やっちゃった」となります。

ただ、良くない評判のせいで、肝心の音楽をちゃんと聴いてもらえなかったとしたら残念でなりません。
それに、似てても良いではないですか。
きっと、70年代のロックが好きで、聴いたりコピーしたりしているうちに、自然と自分のものとして身についてしまった、ということなのだと思えるのです。
ZEPのコピーでも、ましてやパロディでもなく、これがこのバンドのオリジナルだったのです。

ハードロック・バンドとしては非常に良くまとまっていて、平均以上のクオリティです。
実力以外の評判で振り回された感じがして、同情してしまいます。
ZEPに似ていると言われた彼らですが、このアルバム以降は、あえて似た要素から離れようと苦労した様子がうかがえます。
ただ私自身は、ZEP似のこのファースト・アルバムがお気に入りです。

彼らはグレタ・ヴァン・フリートが浴びた称賛を、どのような思いで聞いたかなぁ。

ちなみに、グレタ・ヴァン・フリートは、こちら。



投稿:2020.5.8
編集:2023.10.30

Photo by Jim Reardan – Unsplash

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