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『MAGIC AND LOSS』LOU REED

『マジック・アンド・ロス』 ルー・リード 1992年

このアルバムは、「死」をテーマに制作されたシンプルな作品です。
「生と死」ではなく、「死」です。

このアルバム制作の動機には、親しかった友人二人の逝去があったそうです。
このお二人について私はよく知らないのですが、当時、まだ50歳ほどであったルー・リードに「死」をテーマにしたアルバムを制作させるほど、影響力のある方々だったようです。

遡れば、87年には盟友アンディ・ウォーホル、88年にはヴェルヴェット・アンダー・グラウンドニコが他界しています。
90年にはヴェルヴェット・アンダー・グラウンドのデビュー時のメンバー、ジョン・ケールと一緒に『Songs For Drella』という、いろいろな意味で感慨深いアンディ・ウォーホル追悼の作品を発表しています。

『MAGIC AND LOSS』はシリアスで悲しい雰囲気が覆っているアルバムですが、決してジメジメして悲観的な音楽ではなく、どこか達観したような軽やかさも併せ持っています。
乗りの良いロックン・ロール・ナンバーもあり、ルー・リードらしさは失っていません。
それでもアルバム全体として印象的なサウンドは、エレキ・ギターで弾き語るシンプルなもので、輪郭のはっきりした音のひとつひとつが美しく響いて心に残ります。

つぶやくような歌い方や曲作り、アレンジなどには、特に驚く点はありません。
シングル・ヒットしそうなキャッチーな魅力はありませんので、おそらく彼の作品の中では突出して評価されることはないでしょう。
しかし、このアルバムを楽しむためには、急いた心は邪魔なのです。
久しぶりに会った旧友と飲み交わすように、ゆっくりと時間を取って向き合って耳を傾けてみましょう。
シニア世代になった詩人としてのルー・リードを、深く静かに味わえます。

こんな書き方をすると老境の作品のようですが、そうではなく、彼は枯れてしまったわけではありません。
アルバム最後のタイトル曲、終盤のインストゥルメンタル部分のサウンドは、胸をかきむしられるような悼みに満ちていて、”退廃のロックン・ローラー”の表現力に圧倒されます。

このコラムを書こうとした昨日、仕事先の方の訃報が届きました。
死因はウィルスとは別でしたが、お通夜などは行われないとのこと。
ただでさえ重いテーマのアルバムを聴いていたので、これはヘビーでした。

「死」は、誰もが逃れることのできないテーマです。
改めて、ルー・リードの詩と向き合いながら聴いています。

ルー・リードはいつも変わらずルー・リードであり続けると同時に、いつもその時代を反映して変化していました。
彼自身2013年に鬼籍に入り新譜を望めなくなった今、改めて彼の作品と時代を振り返ってみたくなりました。

このアルバムは歌詞も重要なので、日本盤のCDで持っておく意味はあるように思います。



投稿:2020.5.2 
編集:2023.10.28

Photo by Alessio Lin – Unsplash

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