『オレンジズ・アンド・レモンズ』 XTC 1989年
今回、XTCのアルバムを振り返って聴いてみて、今の耳ではこの『Oranges & Lemons』がベストかもしれないと感じています。
もちろん他の作品も良いのですが、何の思い入れも持たずに聴き比べたら、このアルバムの曲が最も色あせずにずっと楽しめるように思えたのです。
実際に順位付けするのは悩ましいので、あくまでこのアルバムの感想ということです。
この『Oranges & Lemons』は彼らの9枚目のアルバムです。
キャリアとしては約10年が経っていました。
ポスト・パンク、ニューウェイブの波に乗って登場したデビューの後、外部のプロデューサーとの仕事で良い具合に個性を引き出されたと思ったら、逆に音楽作りに凝りだしてスタジオに引きこもるようになり、そんなんじゃダメだとアメリカ人を紹介されるも仲違いして、ひとりでできるもん!と頑張ったのがこのアルバムですね。
そして、これまでの経験と自分の個性を活かして、ちゃんとひとりでできました。
ジャケットのアートからは、ヒッピー文化を感じますが、音楽はそこまでサイケデリックではなく、ビートルズのような良質なポップ・ロックやビーチボーイズのようなサーフ・ミュージック、トーキング・ヘッズで聴けた非西洋の要素、エルビス・コステロのパブ・ロック、ポーグスのようなフォーク・ロックなどが、ちゃんとXTCとして仕上げられています。
・・・のような、と書きましたが、決してモノマネではなく、良質なXTCミュージックになっているからこそ、これがXTCのベストかもと思えるのです。
さらに言えば、ポスト・パンク、ニューウェイブを代表するアーティストとしてのオリジナリティは揺ぎ無く、誰が聴いてもXTCらしいと思えるものになっているのですから流石です。
冒頭の3曲だけで、このアルバムが名盤であると言えます。
ひねくれた感性を若々しい勢いに乗せて展開するXTCこそ、私の聴きたいXTCなのだと再認識できたアルバムです。
投稿:2023.4.21
編集:2023.10.28