『ポルノグラフィティ』 エクストリームⅡ 1990年
80年代の若手メタル・バンドには、当時はあまり関心がありませんでした。
明るくマッチョなLAメタルのスタイルやファッションは、その時代とは合っていないと思えましたし、他に聴きたい音楽が沢山あったのです。
ですから、音を聴いてもいないままに、その括りでエクストリームのデビュー・アルバムは購入していませんでした。
80年代の後半からガンズ・アンド・ローゼスやメタリカの台頭で、ヘビーメタル系に意識がグッと引き寄せられるのですが、このエクストリームのセカンド・アルバムもまた、こうした音楽に関心が戻るきっかけになった一枚でした。
ヌーノ・ベッテンコートというギタリストが凄い、という噂は耳にしていました。
当時、彼らの音楽がファンク・メタルという呼ばれ方をしていたのも、興味を掻き立てられたポイントだったと思います。
このセカンド・アルバムは、発売された時点で購入しました。
そして、とても感心したのを覚えています。
このアルバムは、大きく3つの点で語り継がれる傑作だと思います。
ひとつは、ヘビーメタルにファンキーなノリを持ち込んで成功していること。
弾むようなリズムや間の取り方はファンキーで高揚感がありますが、いわゆるブラック・ミュージックのそれとは趣が異なっています。
身体は動き出しますが、ダンスフロアというよりもライブ会場向きです。
何より、歪んだギターでファンクを演るところが新鮮でカッコいいと思えました。
ふたつめは、超絶技巧のギターサウンドと正統派のヴォーカル。
ギタリストのヌーノ・ベッテンコートは、噂に違わず、新しいギター・ヒーローの登場を印象付けるに十分なテクニックを披露しています。
その速さはもちろん、テクニックがあるからこそ可能なアイデア溢れるプレイには、ワクワクするものがありました。
ボーカルのゲイリー・シェローンも、歌の上手さ、声質やパワーに加えて、ハードロック・バンドのフロントマンとしてのスター性を備えていたと思えます。
ヴォーカルとギターはやはりロックの花形ですから、この二枚看板がイケているというのは、魅力が強化されます。
そして3つめは、名曲の存在です。
スタンダード・ナンバーとして永遠に聴かれ、カバーされるであろう名曲があるか無いかは、リリース時のセールスだけでなく、時を経てからの評価にもかかわってきます。
このアルバムに収録されている「More Than Words」は、時代を超えて聴かれ、カバーされる名バラードと言えるでしょう。
(カバーと言えば、いつどこで見たのか定かではありませんが、アン・ルイスとチャ―が原曲通りな感じで演っていたのは、とても良かった記憶があります。)
バラード曲では「Song For Love」という曲も、少々アイドル・ソングっぽいですが、メロディー・ラインが覚えやすくて良い曲です。
エクストリームに限らず、ハードロック・バンドのバラードは良い曲が多いですね。
フロントの二人以外の演奏に光るものが感じられなかったり、アルバム全体としてのまとめ方に雑さを感じるところがありますが、そんなことを意識させないほどの、やる気に溢れた作品です。
冒頭で、LAメタルに魅かれなかったと書きましたが、80年代のメタルはポップでキャッチ―な名曲を数多く生み出していました。
一方で、エクストリームには、このキャッチ―さが足りないように感じられるところがあります。
ヌーノ・ベッテンコートからは多彩な音楽的嗜好を感じる一方で、逆にそのマニアックさが分かりにくさを生んでいたのではないでしょうか。
リスナーは類型的なバンドを嫌いながら、どこか既存のカテゴリーに収まっていると安心したりします。
他の人気バンドとは少し違うところに魅力を感じたエクストリームの課題が、分かりやすさや親しみやすさであるとするのは矛盾しているかもしれません。
でも今更ながら、長く愛されるバンドとして活躍するには、やはりそれが必要だったのではないかと思うのです。
それでも、このセカンド・アルバムはリスナーの心を捉えました。
エクストリームの強みは良い形で出ています。
この路線で間違っていないと確信できる商業上の成功も手に入れたはずです。
私自身、今回、改めて聴き直して、さらに評価が高くなりました。
若い方がもしもエクストリームを聴くなら、間違いなく、このセカンドアルバムからがお薦めです。
アン・ルイスとチャーの「More Than Words」が、Youtubeにありました。
テレビ録画をあげたもののようでしたので、ここには貼りませんが、検索していただければ見つかると思います。
投稿:2020.7.24
編集:2023.11.4
Photo by min woo park – Pixabay