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『レヴェナント:蘇りし者』 ~ 映画の凄み

2023年のGWに観たアマゾン・プライム・ビデオ

このGWは自室に籠って過ごします。
プライム・ビデオの「ウォッチリスト」に溜めたまま、観られないでいたものを観るのです。
もうすでに最新作や話題作では無くなってしまったものもありますが、観て良かったものについてコメントしておこうと思います。
鑑賞を検討されている方に、少しでも参考になればと思います。

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『レヴェナント:蘇りし者』2015年公開されたアメリカ映画

第88回アカデミー賞では12部門にノミネートされ、レオナルド・ディカプリオが主演男優賞、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが監督賞、エマニュエル・ルベツキが撮影賞を受賞した評価は伊達じゃありません。
映画でなければ不可能な迫力とリアリティに圧倒され、息をするのも忘れてしまうほどです。

ベースになっているのは、西部開拓時代のアメリカで罠猟と毛皮を売りながら探検をしたヒュー・グラスの物語で、彼が熊に襲われ重傷を負い、仲間から見捨てられながらも生還したという逸話です。
タイトルの『レヴェナント:蘇り者』は、街に戻ったグラスを人々が「蘇った亡霊」と呼んだことから付けられたようです。
映画の中の彼は何度も死にかけ、もう生きていたくなくなるほど辛く悲しい目にあいます。
それでも彼は生き続け、この世に存在することの意義を示します。
その過酷さに、こんなにまでして生きなければならないのかと思うと同時に、人はこうしてまで生きられるのだとも思わされます。

生きる能力と意思

ストーリーはシンプルですが、登場人物の関係性は複雑です。
簡単に誰と誰が敵で味方かという構図では語れず、言ってみれば自分以外は誰もが敵です。
人間はもちろん、野生動物や自然もが牙を向けて命を奪いに来るのですから、生きるのはそれだけで過酷なのです。
映画は、その様子を描き出すだけで2時間半の大半を使います。
その間、ほとんどセリフはありません。
そしてその大自然の映像とデカプリオの演技と特撮がこの映画を特別なものにしています。

旅の途中、グラスは彼を助けてくれる旅人と出会います。
彼もまた家族を暴力によって奪われた悲しみを抱えていましたが、その彼は「復讐は神にゆだねる」と言います。
グラスが生きることを諦めずにいたのは、憎しみと復讐心からでしたから、どのような気持ちでこの言葉を聞いたことでしょう。
彼とのわずかな時間は心を慰めてくれますが、彼もまた無意味な暴力によって命を奪われてしまいます。

キリスト教的な価値観は過酷な地で生きる人にとって大切なものであったことでしょう。
また一方で、原住民族にとっても彼らの信仰や文化があったはずです。
生存をかけた暴力的な戦いの中にあって、信仰は何をもたらしてくれるのでしょう。
グラスが生き延びたのは、強い復讐心があったからであり、決して敵を愛し許す心があったからではありません。

映画の中で”神”は人間の都合で語られます。
抗いようのない困難を悪を持って乗り越えるときには神の許しを利用して自分を正当化し、自分が善く生きるためには神に復讐という汚れ仕事を引き受けてもらう、という具合です。
これは大自然の中にあって人間だけが持つやっかいな要素であり、強みかもしれません。

余談ですが、よく間違えて理解されている言葉のひとつに「復讐するは我にあり」があります。
これは「私こそが復讐する権利がある」という意味ではなく、「復讐は私がすると神は言った」という旧約聖書の言葉で、「悪人には神が復讐してくれるから、あなたは愛に生きなさい」という教えなのですね。

自然の摂理は殺すことでは無く生きること

映画の最後の30分は、彼が仲間の元へ生還し復讐を果たすために使われます。
そこでは彼が罠猟をしていたことを思わせるシーンもありまます。
暴力的な描写が続くものの、最後に生還の道中で彼を助けてくれた旅人の言葉を思い出し、とどめをさす手を止めます。

この世界では、いとも簡単に人の命が奪われて行きます。
生きるために他者の命を奪うのは自然の摂理であり、人間もまたその一部なのだとしたら、殺生は自然なことなのかもしれません。
しかし、その動機が私欲のためであってはならないのです。
殺すのは生きるためであって、殺さないこともまた生きるためなのです。

別の映画で「生きろ」という強いメッセージを掲げたものがありましたが、この『レヴェナント』でも、冒頭で語られる「息をし続けろ」という言葉が最後まで印象に残ります。
この映画の本質的なメッセージはそこにあるのです。

このメッセージが重く響くのは、壮大で過酷な大自然、野生動物、侵略者と原住民族の対立と共存、理不尽な暴力や差別などの前で、小さく弱い己の存在を、これでもかと突きつけられるからです。

映画という総合芸術の凄み

これは映画だからこそ表現できた世界です。
監督の覚悟、最高のスタッフ、演者、特殊効果、音楽など、総合芸術としてのポテンシャルを見事に使い切っています。(音楽は坂本龍一とアルヴァ・ノトが担当しました。)
現代の技術を駆使し多額の制作費を投入したとしても、撮影は困難を極めたであろうことは想像に難くありません。
ここにもまた撮りきる執念を感じます。
この映画を作った人たちに敬意を示したいです。

好き嫌いはともかく、凄い映画観ちゃったって感じです。

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2023.5.4

Photo by andy holmes on unsplash

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