『スパイク』 エルビス・コステロ 1989年
こういうポップなロックは、作業用BGMとして流しておくのに良いものですが、エルビス・コステロはダメです。
耳が持っていかれて、作業に集中できなくなってしまいます。
「SPIKE」は、彼の長いキャリアの中で、デビューから約12年後の12作目。
毎年、新作を作り続け、常に高いクオリティを保ち続ける創造力は見事としか言いようがありません。
音楽的な才能に溢れたミュージシャンである彼は、古いロックンロールやカントリーからパンクやニューウェイブなど、幅広い音楽に対する愛情を示してきました。
エルビス・コステロにポップ・スターであることを求めるファンにとって、彼は時に期待を裏切るようなアルバムを発表することがあったかもしれません。しかし、彼の才能と好奇心は、ひとつのジャンルにおさまるものではありませんでした。
どの時代のどんなジャンルであれ、流行したものであろうと無かろうと、良い曲は良い曲なのです。
エルビス・コステロは、アリーナ会場で巨大な音響と照明機材を使ったショーを繰り広げるようなロック・スターではありませんが、誰よりも音楽を愛し、良い曲を届けてくれる、優れた音楽家なのです。
このアルバムは、ポップの魅力に溢れた素晴らしい作品です。
一生に一度でもこういう曲が書けたら、と思うような曲が15曲も詰め込まれています。
ポップ・ミュージシャンであれば、誰もが羨ましくて仕方がない作品ではないでしょうか。
ミスター・チルドレンは、絶対にこのアルバムを聴きまくっていたはずです。(知りませんが。)
1曲目は、軽快さの中に切なさのエッセンスを織り込みが素晴らしく、気持ちよくコステロのショーに招かれます。
続く2曲目、3曲目で、逸る心を落ち着かせて席について音楽に集中していると、4曲目の「ヴェロニカ」で、椅子から立ち上がって踊り出してしまいます。クレジットを見ると、この曲のベースは、あのポール・マッカートニーとなっていました。
ああ、楽しそう・・・。
その後もコステロの名曲ショーは続き、気が付くと約1時間の演目が終了しています。
ジャケットのアートワークは、あまり好みでは無かったのですが、コステロが人間の陰と陽を道化と化して表現してみせているようです。
背景のタータンチェックは、イギリスとパブ・ロックを意識しているのでしょうか。
楽しいけれどただの軽薄じゃない、哀しくて胸がきゅんとするけれど暗く落ち込んで悲しいのとはちょっと違う、そんな魔法の音楽に浸れるアルバムです。
Spotifyでは、ELVIS COSTELLO で検索するのと ELVIS COSTELLO & THE ATTRACTIONS もしくは ELVIS COSTELLO & THE IMPOSTERS 、 ELVIS COSTELLO & Brodsky Quartet で検索するのでは、内容が変わってしまいますのでご注意を。
投稿:2020.6.26
編集:2023.11.13
Photo by saeed karimi – Unsplash