『タービュランス』 スティーブ・ハウ 1991年
イエスのメンバーは、80年代後半から90年代にかけて、けっこう精力的に活動していました。
音楽の潮目が変わって、創作意欲が湧いていたのか、過去の存在にならないように焦っていたのか分かりませんが、イエス自体の活動に加えて各自のソロもいろいろ出されています。
私自身としては、おそらく80年代はニュー・ロマンティック系の新しいバンドに関心が移って、往年のプログレ・バンドの作るものを受け入れにくくなっていた時期だと思います。
自分の耳にフィルターがかかっていますから、ステーブ・ハウがソロを出しても、まともには聴いていなかったのでしょう。このアルバムはCDラックにあったものの、改めて聴いてみたところ、全く聴いた記憶がありませんでした。
いつものようにCDをかけながら書いているわけですが、インストなのですね。
歌はありません。まあ、彼が歌うくらいなら歌は無い方がギタリストのソロらしくて良いです。
このソロ・アルバムがリリースされたのは、イエスが同窓生を皆集めて『UNION/結晶』というアルバムで盛大なクラス会を開いた時期です。
人数が多すぎて消化不良を起こしていましたので、ひょっとしたらスティーブ・ハウは「みんなうるさい、好きにやらせてくれ」と思っていたのかもしれません。
でも、ここで聴けるのも、いつものスティーブ・ハウといえばそうなので、わざわざソロを作る必然性は感じられません。
録音の時期まで調べていないので分かりませんが、イエスでボツにされてしまった曲なのでしょうか?
アルバムを聴き進めていますが、ボーカルが無くて、逆に演奏がしっかりよく聞こえます。
バンドとしては当時のイエスよりもまとまっている感じ(悪く言えばスタジオミュージシャン的)で、楽曲のクオリティは『UNION/結晶』よりも良いのではないかと思うほどです。
時代的にも重厚長大な曲は流行りませんし、プログレ的な場面展開の無い短めの曲が並んでいるのは聴きやすくもあります。
ただ、ハッとさせられるような驚きや、奇跡のきらめきのような瞬間は訪れません。
ジョン・アンダーソンのボーカルと絡んだり、クリス・スクワイヤーのベースと競い合ったり、リック・ウェイクマンのキーボードと役割分担することで逆にスティーブ・ハウの個性が際立つ、というような化学反応もありません。
ただただ、地味目な良い曲と演奏が楽しめます。
スティーブ・ハウは、どんな状況下でも素晴らしい作曲と演奏ができるミュージシャンなのだということを再認識させてもらえるアルバムです。
投稿:2020.3.30
修正:2023.10.27
Photo by Daniel Olah – Unsplash