『ウェイティング・フォー・ザ・パンチライン』 エクストリーム 1995年
エクストリームは、1980年代の終わりにデビューして、約5年ほどの活動期間に4枚のスタジオ・アルバムを制作しました。
一度解散した後に、再結成したようですが、そのあたりのことを私は分かっていません。
CDラックにあったのは、2作目、3作目、そして、この4作目の3枚だけでした。なので、私にとってのエクストリームは、この3枚のことなのですが、これがちょっと思い出してみても印象がバラバラで総括しにくいのです。
先日から改めて記憶をたどりながら聴き直しています。
4枚目の「ウェイティング・フォー・ザ・パンチライン」は、3枚の中で最も印象が薄いので、購入した当時の個人的な評価は高く無かったようです。
世の中の評価も同じだったのか、バンドとしても活動を一旦終結するアルバムとなりました。
その後、ギターのヌーノ・ベッテンコートはソロになり、ヴォーカルのゲイリー・シェローンは、ヴァン・ヘイレンに加入します。
それだけの実力者ですから、演奏は上手ですし、曲も悪くありません。
前作「Ⅲ Sides to Every Story」は、気合の入った挑戦的なアルバムでしたが、商業的には成功しませんでした。
この反動があったのか、このアルバムは原点回帰ともトレンドのグランジに寄せたとも取れるような、比較的に分かりやすい粗削りなロック・アルバムになっています。
演奏はどの曲でも素晴らしいですし、曲として良いものがあります。
「Hip Today」は、このバンドの性格を表している名曲です。
音としては、前作よりもファンの心を捉えたのではないかと思えます。
意地悪な聴き方をすれば、歪みを効かせたヘビーメタル調の高速フレーズが鳴っているとエクストリームっぽいのですが、乾いたクリーンな音だとレッチリを、硬質で歪んでいるとZEPを思い出してしまいそうになります。
もちろん全てが意図して行われていたことなのでしょうが、なんとなくバンドのコンセプトがブレているようにも感じられ、器用貧乏なせいで個性が無くなってしまっているのではないかと心配になったりもします。
本当のところは、デビュー段階から高い評価を獲得していたにも関わらず、アルバム毎にスタイルを変えることを恐れず、音楽的な好奇心を絶やすことの無かった知的なロック・バンドだったのでしょう。
ただ、この賢さが仇になってしまったのか、なんとなく平均点のちょっと上、という優等生的な作りで、「年に1回は聴かずにいられない」というような中毒性のある曲や「この曲で人生を変えられた」という胸に迫る曲が無いのです。
ヌーノ・ベッテンコートは、そのサウンドの多彩さ、テクニック、アイデアなど、間違いなくスーパー・ギタリストです。
ゲイリー・シェローンも、ヴァン・ヘイレンでは成果を残せませんでしたが、1992年の「フレディ・マーキュリー追悼コンサート」で確認できるように素晴らしいヴォーカリストであり、パフォーマーです。
なんと言っても、ロック・バンドは、ヴォーカルとギターにスター性があれば最強です。
エクストリームは、ファンキーでありながら超絶テクニックのギターと正統派ロック・ヴォーカルという強烈な個性を持った素晴らしいバンドでした。
「ウェイティング・フォー・ザ・パンチライン」は、そんな才能と技術を持ったアーティストが残した、高クオリティなロック・アルバムです。
(ちょっと他人事っぽい・・・。)
高い評価を得ているバンドであるとは思いますが、ポテンシャルからしたら、もっとできたんじゃないかと思ってしまうのです。
関係ありませんが、最近、推しているガチャリック・スピンというバンドのTOMO-ZOさんのギターには、ヌーノ・ベッテンコートを感じるのでした。
投稿:2020.7.27
編集:2023.11.4
Photo by Daniel Mirlea – Unsplash