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2024年にリリース40周年を迎えたアルバム・私的TOP40 #2 英国・欧州編

1984年にリリースされたアルバムから、好みのものをピックアップ

各カテゴリーにおける、個人的な重要度でセレクトしました。
昨年も同じテーマで書いたのですが、50作品は多すぎて自分でも読む気になれなかったので、今年40周年は40作品を4部構成で書いてゆこうと思います。

まず1部は北米を発信源とするメジャーな作品、続く2部はイギリス・欧州を発信源とするメジャーな作品、3部はポストパンク・ニューウェイブとアバンギャルド・アンビエント系の好きな作品、4部はプログレ、ヘビーメタルとジャズ、フュージョン系からのセレクトにしました。

ジャンル分けも選定も個人的な思い入れに基づくので、セールスなどのデータとは関係ありません。
それでも、同じような嗜好の方に届いたら嬉しいです。

リリース年は、主にSpotifyの記載をあてにしています。

シングルがヒットした年がアルバムのリリースと前後していたり、日本盤のリリース時期が違っていたり、Wikiの記載と違っているということもありますが、そういう時もSpotifyを優先しました。Spotifyが扱っていない作品については、Wikiやレコード・CDを確かめるようにしました。

順位は音楽の良さではなく、私の思い入れというか思いつきですので順不同です。

2/4 1984年を代表するメジャーな名盤 英国・欧州 10

1.The Smiths – The Smiths

ザ・スミスを知るきっかけは、当時注目していたイギリスのレーベル、ラフ・トレードからデビューしたことでした。
海外の情報が少なかった時代、ラフ・トレードをチェックすることは、ロンドンのインディー・シーンを知る有効な手段でしたので、まずは聴いてみたという感じでした。

これはザ・スミスのファースト・アルバム。
その後の音楽シーンに与えた影響の大きさを考えると意外なほど活動期間は短く、アルバムは5枚しか残しませんでした。
ギタリストのジョニー・マーがボーカルとしてモリッシーを誘ったことで結成されたバンドでしたが、その魅力の本質は歌詞にあったように思います。
音楽は攻撃的では無く、耳馴染みが良くメロディの美しいポップスです。
しかし、そこにモリッシーのシニカルな歌詞が乗ることで心に残る名曲が生まれたのです。

同年には「Hatful of Hollow」というシングルを集めたコンピレーション盤もリリースされました。
両作共に名盤です。


2.The Style Council – Café Bleu

1970年代末から80年代初期にパンクからポスト・パンクへの激動期を独自のスタイルで乗り切っていたザ・ジャムのフロント・マン、ポール・ウェラーがバンドを解散させて新たに取り組んだのがスタイル・カウンシルでした。
これは、彼らのファースト・アルバムにして大傑作。

モッズ・スタイルからソウルやジャズへの大胆なイメージ・チェンジには驚きましたが、その粋でスタイリッシュな音楽は最高でした。
ちょうどポスト・パンクの中で生まれたネオ・アコにも通じる癒し感も心地よいものでした。
全ての楽曲がハイセンスでお勧めなのですが、中でも「マイ・エヴァ・チェンジング・ムーズ」とトレーシー・ソーンをボーカルに迎えた「ザ・パリス・マッチ」は必聴。
いや、やっぱり全部聴いて欲しい。

何度も繰り返し聴いて、今でも聴いて、たぶん数年後も聴いていると思います。


3.Queen – The Works

ハードロックをベースにしながら、プログレ、ロックン・ロール、ダンス・ビートまで自由に取り込んで、まとまりの無さなど意に介さない自由なクリエイティビティには驚かされるばかりでした。
このアルバムは、バンドを休止してソロ活動をしていたメンバーが再結集して制作された11作目。

メンバーそれぞれの曲が採用されたせいか、アルバムとしての統一感こそありませんが、バラエティに富んだ楽曲のクオリティは高く、ファンとしては嬉しく感じました。

レディ・ガガの名前のもとになった「レディオ・ガガ」、大ヒットした「ブレイク・フリー」、ライブの定番「ハンマー・トゥ・フォール」、昔からのファンが喜んだ「永遠の近い」「悲しい世界」と名曲揃い。
他にもロック・バンドとしてのアンサンブルを楽しめる曲や、ジョー・ジャクソンかというピアノがフューチャーされた意外な曲などもあり、充実の1枚です。


4.WHAM!  Make It Big

前年のデビュー作で注目を集めるもどこか中途半端だったワム!が、アイドル性も音楽性も爆発させた傑作アルバム。

8曲収録中4曲がシングル・ヒットして、シングル以外の曲もどこかで聴いたことがあるほど街中で流れていました。
オリジナル・アルバムとしては3作しか残さなかったユニットですが、この作品と同年にシングルで出した「ラスト・クリスマス」でやるべきことはやり尽くしたということでしょう。
いかにも80年代前半らしい音で、曲の出来は良く、ジョージ・マイケルの歌は流石です。


5.The Pretenders – Learning to Crawl

パンクからニューウェイブという大きな変化があった時代にあって、ストレートなロックン・ロールで人気を獲得した、男前のバンドです。
バンドのフロントを務めるのは、音楽雑誌の女性記者だったという経歴を持つ、クリッシー・ハインド。
彼女のスタイルが魅力の全てです。

アルバムからは、ポップな「Back on the Chain Gang」がヒットしました。
デビュー時から今もなお、そのカッコ良さは変わりません。


6.The Art of Noise – Who’s Afraid of the Art of Noise?

アート・オブ・ノイズは、この時代を代表するバンドの筆頭でしょう。
キー・パーソンは、トレバー・ホーン。
マルコム・マクラーレンやイエスのプロデュースで試みた最新の電子楽器や録音・編集技術を、さらに自らのバンドで推し進めた作品になっています。
当時最先端であったが故に今聴くと古臭く感じますが、これがこの時代のサウンドの極北でした。
今となっては誰もが容易にできるようになったDTMの発達は、彼らが商業的に成功したことと無縁ではありません。

個人的には当時、美術大学でイタリア未来派(1909年~)を研究していて、レーベル名のZTTやバンド名の由来、サンプリングの活用などのネタ元が分かっていただけに、このバンドの登場を非常に興味深く思っていました。(未来派の思想は面白く刺激的なので、若い人にも知ってもらいたい。)


7.Frankie Goes to Hollywood – Welcome to the Pleasuredome

トレバー・ホーンのZZTレーベルからデビューした、世界最大の一発屋。
音楽の3要素は“メロディ・リズム・ハーモニー”と言われますが、彼らの魅力はそれら以上に“音色”だったように思います。
ここで響いている音自体にエネルギーが満ちていて、音が時間と空間を支配しているような気にさせられたのです。
今の音楽に慣れた耳にとっては、そこまでの衝撃度は感じられないかもしれませんが、40年前にはショックでした。
「騒音芸術」を推奨した1900年代初期のイタリア未来派の作家ルイジ・ルッソロやプラテッラに聴かせてやりたいと思ったものでした。

わずか2作しかオリジナル・アルバムは制作しませんでしたし、バンドとしての評価は難しいところですが、その衝撃度から1984年を代表するアルバムとして外すことはできないでしょう。


8.The Waterboys – A Pagon Place

前年のデビューに続く2作目にして、傑作。
こういうイギリス北部っぽい音が好きで、よく聴いていました。
日本ではあまり人気が無かったようで残念でしたが、それだけに良いものを見つけたような気になっていました。
ホットハウス・フラワーズやポーグス、マムフォード&サンズあたりが好きな方なら、きっと気に入ってもらえると思います。


9.U2 – The Unforgettable Fire

U2はデビュー時から気になるバンドでしたが、この4作目で彼らのスタンスがより明確になったように感じました。
被爆者の描いた絵画から引用されたタイトルや、公民権運動の指導者キング牧師へ捧げられた曲など、メッセージ性や政治色が強まりました。
もともとそうした問題意識は強かったバンドでしたが、前作がヒットして発言力が増していたことで、余計にそう感じたのかもしれません。
しかし、ここでの取り組みは確実に次作「ヨシュア・トゥリー」に繋がります。
クリエイターとしてのエゴや上昇志向が強まって、高温に熱せられたマグマのようです。
歴史的な名盤が誕生する直前に制作された、創作意欲が凝縮した佳作です。


10.R.E.M. – Reckoning

前年のデビュー・アルバムに手ごたえがあったのか、さらに個性を活かしてクオリティの高い作品を届けてくれました。
この頃はまだメジャーな存在ではありませんでしたし、チャートを賑わすようなヒットも作れてはいませんが、良い曲をシンプルな編成で展開しています。
その後の大成功の予感さえ無かった頃の、瑞々しい良盤です。
これぞ、ポスト・パンク。


これが選外?!

ここから私的 英国・欧州 10 から漏れたアルバムですが、何故?これが?!というものばかりだったので、コメントもしています。

Echo & the Bunnymen – Ocean Rain

前作「ポーキュパイン(やまあらし)」は傑作で、高い評価も獲得したはずです。
この頃、同じ地域で並走していたU2と比較しても、イギリスでの人気は同等だったと思いますし、個人的にはエコバニの方が私の好みなくらいでした。
このアルバムは、そんな勢いに乗って制作された4作目でした。

「シルバー」「キリング・ムーン」「セブンシーズ」は、ある程度のヒットはしましたが、正直なところ、あまり成長が感じられず期待外れでした。
決して悪いアルバムでは無いのですが、この段階でU2との差は明確になってしまいました。


David Bowie Tonight

デヴィッド・ボウイを選外にするのは許されない気もするのですが、正直なところ、このアルバムはあまり聴きませんでした。
前作「レッツ・ダンス」のセンセーショナルさと比較すると地味でしたし、曲も大人というか不完全燃焼な感じがしました。
感動を誘うかのようなフリをしておきながら陶酔まで導いてもらえない、歯がゆさのようなものが残るのです。
「ブルー・ジーン」はシングル・ヒットしましたし、ティナ・ターナーとデュエットしたタイトル曲は少し話題になったものの、アルバム全体としては「レッツ・ダンス」のB面集のようでした。


Julian Lennon – Valotte

歌い出した途端に、「これは!」と吸い込まれました。
リリースされた当時は、ジョン・レノンの息子さんがデビューしたというニュース性に気を取られて、ちゃんと音楽を聴いていなかったように思います。
時代のトレンドにもマッチしていませんでしたし、普通に平均点の上くらいな感想で、取り立てて追いかけることもせずにいました。
あまりにも記憶が薄いので、改めて聴いてみたところ、これは悪くないどころかけっこう良い作品でした。後でまた聴こうと思います。


XTC The Big Express

好きなバンドですので全部聴いていると思っていたのですが、どうやらリアル・タイムでは聴いていなかったようで、当時の思い出がありません。
改めて聴いてみると、エッジが効いていて、いかにもXTCらしい良盤でした。
イギリスのパブ・ロックっぽさも、この当時のニューウェイブっぽさも感じられます。
若い頃にちゃんと聴いてさえいれば、ここで選外にはしなかったでしょう。ごめんなさい。


The Thompson Twins – Into the Gap

嫌になるほどいろいろな店で流れていました。
この時代の特徴的なサウンドであり、トレンドの最先端でしたが、個人的にはこうしたピコピコ・サウンドのポップ・ミュージックが好きではありませんでした。(今はもっと優しい気持ちで聴けますが。)
それでも容赦なく耳に入ってくるので沁みついてしまっています。
大ヒットした「ドクター!ドクター!」「ホールド・ミー・ナウ」はこのアルバムに入っています。


Depeche Mode – Some Great Reward

ノイバウテンのようなミュージック・コンクレートよりも音楽的で、踊れて感情も刺激されるということで、ヨーロッパでディペッシュ・モードはとても人気があったようです。
シンセの音色は古さを感じさせますが、それも当時の雰囲気を思い出させます。
個人的な思い入れが少ないのですが、「ピープル・アー・ピープル」は良くかかっていました。


Howard Jones – Human’s Lib

いわゆるシンセ・ポップというジャンルでアイドル的な人気を獲得したアーティストのデビュー作。
「ファット・イズ・ラブ」「ニュー・ソング」などは日本でもヒットして、こういう音が最先端でファッショナブルなのだなという印象でした。
アルバム全部を聴くと作曲家としてもキーボード・プレーヤーとしても優秀なアーティストだと分かるのですが、いかんせん、シンセ主体のポップ・ミュージックは、この時期あまり好きではありませんでした。


Orchestral Manoeuvres in the Dark (OMD) – Junk Culture

オーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダークは、1980年に「エノラ・ゲイの悲劇」でデビューしたシンセ・ポップのグループ。
エノラ・ゲイは太平洋戦争で運用されていたアメリカの爆撃機B-29のことで、広島に原子爆弾(リトル・ボーイ)を投下した機体名、しかも機長の母親の名前から取ったものでした。
曲調は能天気なエレクトロ・ポップで、こうした軽薄そうな音にシニカルな歌詞を合わせて「Is mother proud of little boy?」と歌うのは、いかにもイギリス人のシニカルさなのでしょう。
ただ、そこに反戦の意図があったとしても、その扱い方には違和感があり、気持ちよくは聴けませんでした。
バンドはこの時代において最新の電子楽器をセンス良く使いこなしていましたので、音楽通のリスナーには高く評価されていたと思います。私も無視できずによく聴いていました。
このアルバムは、彼らの強みであるシンセの活用よりもポップで聴きやすい音楽を志向したように感じられました。
そうした試行錯誤は、次作以降でのヒットにつながってゆきます。
ある意味、過渡期的な作品でしょうか。


Big Country – Steeltown

前年のデビュー作が良い出来でしたので、このアルバムは売れたようです。
ただ、シングル・ヒットが無く、日本ではほとんど話題にならなかったように記憶しています。
良いバンドだとは思うものの、功績はプロデューサーのスティーブ・リリーホワイトのもののように感じてしまうのです。


Eurythmics – 1984 (For the Love of Big Brother)

「セックスクライム」という曲がシングル・カットされていましましたが、日本で公開されなかった(?)映画のサントラだったこともあって、あまり関心が持てませんでした。


Duran Duran – Arena

この時期のデュランデュランは無敵でした。
ライブなので選外ですが、当時はベスト盤的な感じでよく聴いていました。


John Waite – No Brakes

元バッド・イングリッシュのボーカリストがソロで活動を始めてリリースした2作目。
キャッチーなロックを作るのが上手く、このアルバムからは「ミッシング・ユー」が大ヒットしました。


The blue nile – A Walk Across The Rooftops

記憶が定かでは無いのですが、たぶんレコード店でピック・アップされていて、スコットランド出身の新人だということも気になってジャケ買いしたのだと思います。
とても気に入ったわりには、あまり聴きませんでした。
久しぶりにSpotifyで聴いたら、やっぱり忘れていました。もったいなかった。


Billy Ocean – Suddenly

ずっとアメリカの方だと思っていたのですが、確認したところイギリスで活動していたのですね。
このアルバムからは「カリビアン・クィーン」「ラバーボーイ」「サドンリー」という曲がヒットして、日本でもけっこう取り上げられていたと思います。
ただ、「カリビアン・クィーン」は、マイケル・ジャクソンの「ビリー・ジーン」そっくりですし、他の曲もどこかの何かに似ていてオリジナリティは感じられません。


新旧の交代

40年前の1983年は、新しい音楽が生まれてパワーを持ちだして、新陳代謝が進んだ年でした。
特にイギリスではパンク以降の音楽がどうなるのか模索していた時期で、新しい表現が数多く生まれました。
これまでならインディーズで、ごく少数のリスナーが趣味的に楽しんでいたであろうジャンルにもスポットがあたり人気が出るようなことがありました。
「量が質を担保する」と言う言葉がありますが、大量に生み出された新しい音楽には優れたものが確かにあり、そうした芽吹きを見つけることは刺激的でした。
自由になるお金があまり無かった時期でしたが、バイト代のほぼ全てを音楽につぎ込んでいた時期です。
今のようにインターネットで世界中の情報が手に入ったり、配信で音楽が聴けたりしたら、逆に処理しきれなくてパンクしていたかもしれません。
若い方にとっては生まれる前の作品でしょうが、この時代に新しく生まれた音楽は、今の時代にも大きな影響を与えていると思えます。
音楽好きな方なら、この時代の音楽は聴いておいて損は無いでしょう。

ここではイギリスを中心とした欧州の音楽を取り上げましたが、こうしたメジャーな音楽以外にも魅力的な作品が多数あり、当時の私はそうした音楽を探して聴くことに夢中になっていました。
以下にまとめていますので、よろしければご覧ください。

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投稿日 2024.1.15

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