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『Hackney Diamonds』The Rolling Stones

音楽

『ハックニー ダイヤモンズ』ザ・ローリング・ストーンズ 2023年

ローリング・ストーンズの新作が、今月リリースされました。

傑作でした。
まだ数回しか聴いていませんが、これはバンドの集大成であり、現時点でのベストであり、ロック史に刻まれる作品になる気がします。

長いキャリアを持つ、ロック界の最高峰バンドが、18年ぶりに放つオリジナル作品ですから、リリース前から音楽通の方々からメディアから大騒ぎなのでは、と思っていたのですが、フジテレビのドラマとの主題歌タイアップがある以外は話題になっているような気がしません。
確かに、いくら大物とは言っても、人が生まれて成人するほどの間オリジナルを出していないのですから、若い人たちにとっては知りようが無いでしょう。

でも、このアルバムは、作品自身の持つ力で、今後、話題となることでしょう。
それだけの価値のある作品だと思えます。

かく言う私自身は、ストーンズの熱烈なファンというわけではありません。
私がストーンズを知った頃には、彼らは既に大成功して名声を手に入れたモンスター・バンドでした。
若かった私としては、メインストリートのど真ん中にいる彼らをシニカルな目で見てしまっていたということもあります。

それでも「Jampin’ Jack Flash」ほど意味不明でカッコイイ英語は無いと思っていましたし、失恋したときには「You Can’t Always Get What You Want」を聴き、娘が生まれたときには「She’s a Rainbow」を彼女のテーマ曲にするくらいには好きですし、ひととおりは聴いてきました。

そんな距離感の私ですから、バンド歴約60年、80歳にもなるメンバーが作る新作に期待するところは無く、なんなら聴かずに終わっていたかもしれません。

しかし、少し前に先行で公開された「Angry」の動画がYoutubeにあがっているのを観て、あまりの出来の良さに「コレは聴かないといけないのではないか」と思ったわけです。

ついにリリースされた『Hackney Diamonds』は、大傑作でした。
彼らは、自分たちが何者で、現代がどういう時代で、リスナーがどういう音楽を好んで聴いているかをよく理解しているようです。

これまでも時代の音楽傾向に適合したアルバムは作っていましたが、80年代以降の作品は私にとってあまり魅力的には映りませんでした。
今作では、彼らが歩んできた音楽を総括しつつ、決して懐メロにならず、現代的なロックとして聴くことができます。
これはアレンジの巧さなのか音色選びのセンスなのか、何でなんでしょう。

演奏も歌も若々しくエネルギッシュで、とても80歳の大御所が演ってるとは感じられません。
曲も良いですし、(全部は理解できていませんが)歌詞も良いです。
古くからのファンはもちろん、若いリスナーにも刺さるのではないでしょうか。

アルバムのクレジットには、ポール・マッカートニー、スティーヴィー・ワンダー、エルトン・ジョン、レディー・ガガ、さらには元メンバーのビル・ワイマンの名前があり、そうした点からも語られることがありそうです。
彼らもまた、レジェンド級のスーパー・スターですが、若い世代からしたら、こうしたアーティスト達は大御所すぎて、逆に関心が失われてしまうかもしれません。
しかしここでのコラボは、楽曲を良いものにし、アルバムのバラエティ感を出すことに貢献しているように思えます。

アルバムとしては、疾走感とパワー溢れる前半と、テンポを落としながら自然体で展開する後半の構成も申し分なく、ベテランらしさは強みとして発揮されています。

各曲について語るのは本物のファンの方に譲るとして、個人的に白眉だと感じたのは、オープニングの「Angry」、レディ・ガガ、スティーヴィー・ワンダーを迎えた「Sweet Sound Of Heaven」でした。
でも、他の曲も全て最高級品で、捨て曲なんてありません。

このバンドがローリング・ストーンズでなく、無名の新人だったとしても、この作品を作って出てきたら間違いなく高い評価を得ることでしょう。

家のスピーカーから聴いても、街を歩きながらヘッドホンで聴いても、運転しながらカーステレオで聴いても、どれも最高にハマりました。

リリースされて、これから様々なレビューが出てくると思います。
古くからのファンはどう聴いたのか、若いリスナーの耳にはどう届いたのか、調べてみたいと思います。
ストーンズファンでは無いロック好き還暦オヤジの私としては、かなりの高評価です。
あんまりメジャーものを褒めたくないのですが、やっぱ凄いや。

投稿:2023.10.23

Photo by jason-d unsplash


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