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『A Passion Play』 Jethro Tull

音楽

『パッション・プレイ』 ジェスロ・タル 1973年

アルバム・タイトルは『パッション・プレイ』。
収録曲はこの1曲で、組曲仕立て。再生時間は、約45分。
長尺曲、これに極まれり、という作品です。
(同時期には、YESの『海洋地形の物語』2枚組4曲という上手がいますが。)

アルバムは無音から始まり、謎のノイズが聞こえてくると、ゆっくりと音に姿かたちが作られ、メロディとリズムが生まれます。
そこからは時間をかけて、時に淡々と、時には大袈裟にドラマが奏でられるのですが、何せ意味が分かりません。
困惑しつつCDジャケットを見てみると、バレリーナは目を開いたまま仰向けで倒れ、口からは血を流しています。写真はモノクロで、なんともただ事では無いようです。
(楽曲とバレリーナには関係性が無いようですが・・・。)

前々作の『アクアラング』でバンドの方向性に自信を付けたジェスロ・タルは、それ以降のアルバムでプログレッシブ・ロック色を強めてゆきます。
イアン・アンダーソンの奏でる脇役に甘んじないフルートとマーティン・バレのヘビーなギターサウンドは、プログレとの相性も良いですし、高度な音楽構成力があり長尺の曲を演奏し切る力も持っていました。
大きな世界観でアルバムという作品を作り上げる、という志向性は彼らの長所を生かす道だったように思えます。

ジェネシスを筆頭に”演劇的”と紹介されるバンドやアルバムは数多くありますが、ジェスロ・タルの今作『パッション・プレイ』と前作『天井桟敷の吟遊詩人』は、音楽劇をそのまま録音したような作品になっています。

発表当時、欧米では高い評価を得たアルバムですが、それでも『パッション・プレイ』は容易に人にお薦めできる作品ではありません。
逆に、だからこそこの世界にはまった人は、大ファンになってしまうかもしれません。

このアルバムは、聴く側にもそれなりの集中力を求めてきます。
これから聴かれる方は、しっかりと演奏に耳を傾けて向き合っていただければと思います。
他の音楽では得られない、濃厚な時間を過ごせることでしょう。

Spotifyにあがっているスティーブン・ウィルソンがアレンジしたのバージョンでは、組曲が15パートで構成されていました。

プログレ好きな私としては、こういうトータル・コンセプトで作られたアルバムは好きなのです。
ただ、この『パッション・プレイ』はコンセプトが先行し過ぎたようで、楽曲の魅力が弱く感じられるのが少々残念なところです。
ジャケットのデザインは、ジェスロ・タルの中で一番いいのですが・・・。

追記:「2023年にリリース50周年を迎えるアルバム・私的TOP50」では、選外にしてしまいました。

2023年にリリース50周年を迎えたアルバム・私的TOP50
1973年リリースの名盤 ここのところ、ピンク・フロイドの『狂気』50周年に関するニュースを多く見聞きします。50年前はまだ小学生でしたので、海外の音楽を聴く機会といっても、ラジオで流れてくるものを偶...

投稿:2020.3.28  
修正: 2023.10.27

Photo by fsightstudio – Pixabay

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