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『THE Myths And Legends Of King Arthur And The Knights Of The Round Table』 RICK WAKEMAN

音楽

『アーサー王と円卓の騎士たち』 リック・ウェイクマン 1975年

ソロ作品「ヘンリー八世の6人の妻」(1973年)・「地底探検」(1974年)は当たり、同時期に参加していたイエスでも高い評価を獲得したリック・ウェイクマンは、やる気満々です。
立て続けに制作されたのは、「アーサー王物語」をモチーフとした「アーサー王と円卓の騎士たち」。
この3作をして文芸三部作と呼ぶこともあるそうです。

基本的には前作を踏襲するようなアプローチです。
売れたのですから、大きな方向転換をする必要はありません。
まあ、歌詞の英語は分かりませんし、表現されている音楽は相変わらずのリック・ウェイクマン節ですから、テーマと合っているかどうかも、私にはあまり関係がありません。
自信を持って制作されたことがうかがえる、見事な出来です。
前作がオーケストラを率いてのライブ・レコーディングだったのに対して、今回はスタジオ・アルバムということで、バンド的な曲もあり、コンパクトな印象です。
実際は大所帯らしいのですが、クラシック・コンサートからミュージカルに変わったという感じで、親しみやすくなりました。
若いロック・リスナーには、前作よりもこちらの方が聴きやすいかもしれません。

リック・ウェイクマンは、中学生の頃によく聴いていました。
リアルタイムでそれぞれを順番に聴いたというよりも、同時期にソロ6作「ヘンリー八世の6人の妻」「地底探検」「アーサー王と円卓の騎士たち」「リストマニア」「神秘への旅路」「罪なる舞踏」をまとめて聴いていたわけです。
こうして並べてみると、いずれも傑作と言ってよいアルバムばかりで、その密度に圧倒されます。
これらの中にあって、この「アーサー王と円卓の騎士たち」は、当時、どうしても個性に乏しく、個人的にも思い入れの弱いアルバムとなってしまっていました。
そして、それは今回、改めて聴いてみても同じでした。

それでも、ロックとオーケストラの融合というテーマにおいては、この時期におけるひとつの完成形だったと思います。
いっぺんに聴いていたのがいけなかっただけなのです。

2016年には、新たに録音し直したアルバムが出ています。
(今年、さらにSHMCD仕様で再発されたようです。)
これを聴くと、このアルバムが良い作品であったことが再認識させられます。
過去の作品を同じアーティストが再録音すると、多くのケースで、かつての輝きが失われていてガッカリするものですが、これは良いです。
(2014年には「地底探検」も再録されていて、こちらも良い出来でした。)
オリジナルに新しい曲を加えて、収録時間は倍になっています。
録音が良いのはもちろん、演奏やヴォーカルのクオリティが上がっていて、新たに加わった女性ヴォーカルも気に入りました。
新作として聴けるレベルです。
初期の作品に特別な思い入れが無い方には、こちらをお薦めします。
ジャケットのアート・ワークが(たぶん)ロジャー・ディーンなのは嬉しいのですが、ただ一点だけ、ここはもっとオリジナルに寄せて欲しかったと思ってしまいました。(森の中の騎士は隠れているし、構図は「リレイヤー」かと…。)

ロックという音楽表現は、こういうものもあって良いのだと、刺激を受けた作品です。

投稿:2020.9.14
編集:2023.10.31

Photo by Jonathan Kemper

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