PR

『Fragile』 YES

音楽

『こわれもの』 イエス 1973年

イエスというロック・バンドの代表作というだけでなく、プログレッシブ・ロックの代表作としてこのアルバムを挙げる人もいるのではないでしょうか。
超テクニカルなスーパー・バンド、イエスをロック史において重要なバンドに位置付けたアルバムです。

イエスは、1960年代末から今まで何人ものメンバーが入れ替わり、音楽スタイルを変化させながらも、独自性と普遍の価値を持つ稀有なバンドです。

長い歴史を常に現役で活動し続けたイエスは、数多くのアルバムを残しますが、批判を覚悟で言ってしまえば、まずは『Fragil』『Close to the Edge』『Going for the One』を聴けば、OKです。
もちろん、他にも重要なアルバム、名曲やヒット曲の入ったアルバムはあります。
個人的には『Time and Words』はお気に入りの1枚です。
でも、このバンドを知るには、まずこの3枚をおさえていただくのが良いと思います。

この『Fragil/こわれもの』は、そんな中でも古くからのファンの方に人気の高いアルバムでしょう。

この時期のイエスは、メンバーの豪華さが桁外れで、演奏のクオリティも群を抜いています。
個性が融合したというよりは、混ざり合いきらずにマーブル模様になってしまったように、アルバム全体の一貫性が感じられないところはありますが、そこは逆にバンドの持つ可能性の広さだと感じることができます。

どんな曲だろうが、この歌声が乗ればそれはイエスだろう、と思えるほど圧倒的な魅力を持つ ジョン・アンダーソンさんのボーカル。
ブリブリとボリュームを上げて主張してくる クリス・スクワイヤのベース。
変拍子だろうが高速だろうがお構いなしの ビル・ブルーフォードのドラム。
ギター・キッズたちがコピーを諦める超絶技巧の スティーブ・ハウのギター。
我の強い演奏に抒情的な美しさを織り交ぜる リック・ウェイクマンのキーボード。

個性がぶつかり合って、混ざり合っているのに溶け合ってはいない。
それぞれの色はパレットで混ぜ合わされることが無いままキャンバスに点描され、全体を眺めた時に初めて調和をもたらす。
いや、順番からすると逆かもしれません。
完全な調和を見せていると思ったものが、目を凝らしてみた時に実は個性の強い原色の集まりだったと気づくような、そんな印象派や野獣派の絵画のようなアンサンブルが楽しめる音楽です。

イエス『Fragil/こわれもの』は、荒々しさと美しさが結晶した、親しみやすいプログレ作品であり、ロックの名盤です。


投稿:2020.3.28  
修正:2023.10.28 

Photo by Adolfo Félix – Unsplash

コメント

タイトルとURLをコピーしました