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『REWAIND THE FILM』MANIC STREET PREACHERS

音楽

『リワインド・ザ・フィルム』 マニック・ストリート・プリーチャーズ 2013年

デビューからのキーマンであるギタリストのリッチー・エドワーズとともに、激しい自己主張を繰り広げたバンド・サウンドの90年代前半。
彼の失踪による解散の危機を乗り越えて音楽的な変化を遂げ、商業的な成功をつかむ90年代後半。
そこから自己を見つめ直すかのような『Know Your Enemy』(2001年)、ベスト盤(2002年)、レア・トラック集(2003年)という悩みの時期を経て、ついにマニック・ストリート・プリーチャーズは再出発します。

素晴らしい曲の歌ものロックというスタイルで再スタートした彼らは、2000年代に入ってからも新たなファンを獲得しながらさらに飛躍を遂げますが、そんなステップの中で届けられたこの『REWAIND THE FILM』は、少々異質なアルバムでした。

もう再出発後のスタイルのままで名曲を生み出していけば良さそうなものですが、このアルバムでは意外なことにアコースティック主体の落ち着いた作風に大きく舵が切られています。
全体としては躍動感に乏しくて、表現としての情感があえて抑えられている感じがます。

バンドが大人になったということなのでしょうか。少々、置いてけぼりを食ったような感じです。
リリース当時は、まるでロキシー・ミュージックの『AVALON』を聴いた時のように、「これでこのバンドは終わってしまうのだな」という気になってしまいました。タイトルも、そんな感じですし。

彼らの作品(音楽や映像)には、日本が時々登場しますが、このアルバムでも『I Miss The Tokyo Skyline』という印象的な曲があり、淡々と東京への思いを歌ってくれています。
その他の楽曲でも個人的な心情や社会問題が、彼ららしい洞察を込めて歌われています。
このアルバムでは、それらが諦観的に聞こえるところが良さでもあり、期待外れでもあったということなのでしょう。
もちろん、それぞれの楽曲は悪くありません。
これがマニック・ストリート・プリーチャーズの作品でなければ、もっと褒められているかもしれません。

10年ぶりくらいでこのアルバムを聴いているのですが、これはバンドが過去を回想して終わりを告げるアルバムでは無く、バンドが熟成を重ねる過程で必要なステップだったのかなと思い直しました。
現時点では、その後も彼らが音楽活動を継続していて素晴らしいアルバムを発表することを知っていますし、2021年の良盤『The Ultra Vivid Lament』への布石ともとれます。
今だから言えることですが。

『REWAIND THE FILM』は、聴き込むほどに味が出る、大人なマニック・ストリート・プリーチャーズです。

このアルバムが気に入る方には、現時点での最新作『The Ultra Vivid Lament』もおススメです。



投稿:2020.4.30 
編集:2023.10.27

Photo by Stefan Grage on Unsplash

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