PR

『SKYLARKING』XTC

音楽

『スカイラ―キング』 XTC 1986年

虫の鳴き声や自然音で幕を開けます。
XTCなので、何があっても驚かない心構えはできていたものの、あまりにも予想とかけ離れた音から始まり、そのまま優しいくつろいだ雰囲気の曲が流れ出して、「今回はそういうのなの?」と構え直したのでした。

XTCは、1970年代の後半にデビューしたので、いわゆるUKロック、パンク・ムーブメントの流れで語られることがありますが、どうも見た目が違うな―と感じていました。
ただ、大友克洋氏の「AKIRA」に描かれていた不良のように、こういう普通そうな連中の方が壊れているかもしれないと、危険な雰囲気だけは感じ取っていました。そしてその勘は、だいたい当たっていたと思います。これは、ヤバいポップ・バンドでした。

1979年から1989年までの10年間に発表されたアルバムは、どれもが素晴らしいアルバムです。(その前後も活動していますが。)
しかしながら、その中でベスト・アルバムはどれかと問われて、この『SKYLARKING』を選ぶ人は少ないもしれません。
CDの解説には、アメリカでのヒットを狙ったレコード会社がトッド・ラングレンをプロデュースに起用することを思いついて実現したようなことが書かれていました。
跳ねるように粒立った音やひねくれたメロディライン、しゃらくさい小業のようなものは控えめに、ストレスなく聴きやすいマイルドな仕上がりになっています。
トッド・ラングレンらしさ全開でもないですし、XTCらしさ爆発でもなくて、モヤモヤします。
フランスのレストランで出されたカレーがすごく美味しかったのに、本音を言えばインド・レストランの方が好きだったと感じてしまうような感じでしょうか。やっぱり本場のスパイスはしっかり効かせて欲しいのです。それが口に合わないなら、それはそれで良いのです。
XTCアンディ・パートリッジは多彩なポップセンスを持つ職人肌なアーティストですが、癖は強いので、万人が好きにならなくても良いのだと思うのです。

ただ、そんな風にこのアルバムにイマイチなコメントをしてみても、繰り返し聴いているとなんだか中毒性があって、ずっと流しっぱなしにしてしまうのですから侮れません。
実はトッド・ラングレンは良い仕事をしていて、アルバム全体の質感をコントロールしていますし、私は彼の大ファンなのです。
個性こそ違っていたでしょうが、アンディ・パートリッジとだって相性が悪いなりに素敵な化学反応を生んでいたようにも思えます。
XTCらしさという点では違うのですが、好みで言えば私の中で『SKYLARKING』はトップ3に入るお気に入り盤です。

アルバムの最後に収録されている『Dear God』は、歌詞も含めて名曲です。
この1曲をもって、このアルバムをベストに推してもいいくらいです。
Youtubeに和訳付きのPVがありますので、XTCファンには言わずもがな、全てのロック・ファン、なんならロック好きで無い方にも、歌詞を読みながら聴いて欲しいです。

余談ですが、「チェンソーマン」で今展開中の落下の悪魔(?)の描写で、このビデオを思い出しました。

投稿:2020.4.21 
編集:2023.10.28

コメント

タイトルとURLをコピーしました