『憂国の四士』 U.K. 1978年
もう、こんなの絶対買うでしょ、というメンバーで結成された、U.K.です。
UKではなく、U.K.です。モーニング娘。みたいなものでしょうか。ドットが付いているのが正式ですね。
キング・クリムゾンを辞めてユーライア・ヒープに居候していたジョン・ウェットン(B)と、キング・クリムゾンを辞めてフラフラしていたビル・ブルーフォード(Dr)が、カーヴド・エアにいたエディ・ジョブソン(Key)と、ソフト・マシーンを辞めてソロ活動していたアラン・ホールズワース(G)を誘って作った、超が付くスーパー・グループです。
日本盤のアルバム・タイトルは「憂国の四士」。まさに最強の4騎士の登場です。
と熱くなっても、バンド名もメンバー名も全然分からないという方には何のことやらチンプンカンプンでしょう。とにかく、けっこう凄いバンドの凄い人たちが集まって作った凄いバンドということです。
どんな音世界が展開されているのかと、期待感マックスで聴いたのは高校生の頃でした。
当時、なけなしのお金を使って手に入れたというのに、感動が薄くて、なんだか肩透かしをくらったような気分になったのを覚えています。
この時期は、思い入れのあるプログレ・バンドがマーケットに迎合してポップでテクノになっていくことに落胆していたので、「U.K.よ、おまえもか」という気持ちになってしまったわけです。
戦犯は、ジョン・ウェットンとエディ・ジョブソンでしょう。
ジョン・ウェットンは、その後の活動を見ても明らかなように、ポップなロックが嫌いではないんですね。もっとメンバーの個性を活かして化学反応を引き出せばよかったのに、このU.K.をエイジアの実験場にしてしまった感じがします。
エディ・ジョブソンは、器用にトレンドに乗った音を提供しただけなので責められるのはおかしいかもしれませんが、音に深みが無く「憂国」とは程遠いのです。今聴いたときに古さを感じてしまう要因が、彼の音色であることも否めません。
ただ、このバンドは日本では高く評価されていたと記憶しています。音楽雑誌などでは、べた褒めされていたのではないでしょうか。
良く言えば、プログレの感性と最先端の音楽トレンドを高い技術を持つ4人が融合させた、ということかと思います。
1曲目のタイトルを歌うフレーズが2曲目のタイトル歌詞でも使われたり、3曲目の中間部以降で1曲目のメインテーマが引用されたりと、組曲的なアイデアが盛り込まれていて、そういうのが好きなファンはニヤリとしそうです。
4曲目以降、アラン・ホールズワースらしい速弾きギターなども聴けるのですが、ビル・ブルーフォードのドラムは全体を通して特筆すべきものが無いような気がします。(私の要求が高すぎるせいです。素晴らしいドラムを聴かせてくれています。)
アルバムとしての聴きどころは、8曲目「Mental Medication」のボーカル終わりから展開するインター・プレイです。これは凄まじく迫力があります。
個人的にはジョン・ウェットンのボーカルが大好きなので、キング・クリムゾンのような歌声を期待したのですが、一番良かったのがボーカルが無い部分だったとは、なんとも複雑です。
勝手に期待して、勝手なイメージを作って、違っていたら評価を下げる、というのはフェアでは無いと思いますが、本当に大きな期待をしてしまったものですから、スイマセン。
このアルバムがリリースされる前年、セックス・ピストルズが鮮烈なデビューを果たし、音楽界はパンク・ムーブメントが席巻していました。
それは同時に、プログレッシブ・ロックが音楽ジャンルとしての人気を失い、多くのバンドが方向性の転換を余儀なくされていたということでもありました。
プログレッシブ・ロックを牽引していたこれだけのプレーヤーが集まれた背景には、そうした実情もあったと思われます。
なので、U.K.が演奏力の高さを活かしてジャズ・フュージョン的な音楽にロックっぽさを加味したやり方は間違っていなかったと思えます。
名盤の誉れ高いアルバムだけあって悪いところはありませんし、凄い演奏が繰り広げられていることは保証できます。
バンド・メンバーに先入観の無い若い人の耳にはどう聴こえるのでしょう。
投稿:2020.4.6
編集:2023.10.27
Photo by Alex Ware – Unsplash
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