『ドリトル』 ピクシーズ 1989年
このバンドを知ったのは、4ADというイギリスのインディーズ系レーベルからデビューしたことがきっかけでした。
バウハウスやコクトー・ツィンズなど、このレーベルのアーティストからは、退廃的な暗さや耽美的なリリシズムの香りがしていました。
こうした世界観が好きな私は、このレーベルから出てるものはそれだけで自分の感性と合うような気がして、CDを買う時の判断基準にしていたわけです。
海外の音楽情報が少なかった時代、何をレコード購入の選択基準にするのかは、かなり心細い状況でした。
ましてインディーズ系ですと、大手のレコード会社のアーティストのような宣伝がされていません。
良く分からないアーティストのCDにお金を払うのは、「ある程度の失敗は授業料だ」というくらいの心構えが必要だったのです。
あの時代に同じ音楽の趣味を持つ年上の友人がいたら、無駄な出費はかなり減らせたと思えますが、いまだに人づきあいが苦手な私には、それも仕方ないことだったでしょう・・・。
実際、けっこうな学費は払っていたと思います。
そんな中、インディーズ系で波長の合う個性的なレーベルを見つけたのは、嬉しいことでした。
(同様にベルギーのクレプスキュールというレーベルも信頼していて、当時、提携していたレコード・ショップ新星堂には随分とお世話になりました。)
脱線しすぎたので戻します。
ピクシーズは、1980年代半ばにアメリカで生まれたバンドで、これまでの4ADの印象とは異なるストレートなオルタナティブ・ロックを演奏していました。
当時のアメリカにはそういうムーブメントがありましたので、4ADとしては新しいタレントを発掘したということなのでしょうが、個人的には耽美性を求めて聴いたので、初めて聴いた時は「これは失敗したな」と思ってしまいました。
こちらの勝手な誤解が原因ですので、ピクシーズは悪くありません。
ただ、残念なことに第一印象が悪かったために、その後の作品も含めて、ほとんど聴いていませんでした。
今回、相当久しぶりに聴いています。
なるほど、注目された理由は分かります。
『Here Comes Your Man』はヒットしたのか、よく耳にしました。
オルタナティブを”トレンド”とは言いたく無いのですが、こういうタイプのバンドが多く生まれていた中で、ピクシーズは音楽的に聴きやすかったのだろうと思えます。
歌詞が分かれば、もっと共感できるのかもしれません。
『Doolittle』は、オルタナティブのエネルギーを失うことなく、上手くアート感覚とポップ・センスでまとめることに成功した良盤です。
Spotifyを見たら、なんと2022年に新譜が出ていました。
早速、聴いてみましたが、悪くはありません。ただ、なんだか昔とあまり変わらないような・・・。
音はキレイで演奏も上手く洗練されましたが、残念ながら新譜は私の心には響いてきませんでした。『Doolittle』の方がいいです。
投稿:2020.4.23
編集:2023.10.28
Photo by Max nerwise – Unsplash
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