『リストマニア』 リック・ウェイクマン 1975年
それこそ、リック・ウェイクマンのマニアでもなければ、CDは買わないかもしれない、変な意味で貴重なアルバムです。
ケン・ラッセルが監督した同名の映画のサントラということで、リック・ウェイクマンのソロ・アルバムとしてはカウントされないケースもあるようです。
映画の方は、リストが活躍した時代、その界隈の事柄を、猥雑でナンセンスな感覚で物語化したもので、賛否両論あります。
史実としても女性にモテモテだったという主人公のリストを、ザ・フーのロジャー・ダルトリーが演じていて、リック・ウェイクマンもちょい役で登場します。
映画については、古いものですし、趣味が分かれる作風なので置いておくとして、この音楽は興味深いものでした。
興味深いとは言っても、あくまでサントラ、企画モノという意味でのことです。正直に言えば、リック・ウェイクマンのクリエイティビティが全面に発揮されたアルバムとは言い難いです。
ただ、演奏には、次作「神秘への旅路」を一緒に作るザ・イングリッシュ・ロック・アンサンブルも参加していて、スペース・ロック的な色を出しています。
古い時代を描いていながら電子楽器が鳴り響くのは、映画のハチャメチャさにマッチしていたように思えたりします。
アルバム全12曲中、リストやワグナーの曲をアレンジしたものがほとんどで、リック・ウェイクマンのオリジナルは1曲だけようです。
その上、映画の中でリストが弾くピアノの演奏は、リックではなく、デヴィッド・ワイルドという方が演奏されているようです。(おそらく、ブダペスト国際音楽コンクールのリスト・ピアノ・コンクールで1961年に優勝した方ですね。正確なことは分りませんが・・・。)
サントラの中で、どこからどこまで彼が弾いているかは確認できないのですが、リック・ウェイクマンのソロとしてカウントされないのは、そういう理由があるのかもしれません。
曲は悪いハズがありません。何せ原曲はリストです。
アルバムの聴きどころは、「愛の夢」「オルフェウス・ソング」「愛の勝利」でしょう。
特にポップ・ソングのような大胆なアレンジで展開する「オルフェウス・ソング」「愛の勝利」は、リック・ウェイクマンとロジャー・ダルトリーのコラボとして聴きごたえがあります。
「アーサー王と円卓の騎士」と「神秘への旅路」をつなぐ、過渡期的なアルバムととらえて聴くこともできます。
中学・高校時代には気に入ってよく聴いたものですが、改めて聴いてみて、やっぱりリック・ウェイクマン・マニア向けかなと思ってしまうのでした。
本人が気に入っていなかったせいか、権利関係の問題か、Spotifyにはアルバムがありませんでした。
でも、ベスト盤「The Journey(The Essential)」のディスク3で聴けます。
ということは、これはリック・ウェイクマンが弾いてるってことだよなぁ・・・。
投稿:2020.9.15
編集:2023.10.31
Photo by Vlah Dumitru
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