『蜃気楼(ミラージュ)』 キャメル 1974年
なにしろ曲がいいです。演奏もアレンジもいいです。地味ですが。
派手さはありませんが、よく聴けばちゃんと作ってるなぁと感心すること間違い無しの良盤です。
このアルバムでは、ピーター・バーデンスのキーボードとアンドリュー・ラティマーのギターが光っています。ただそれだけでは無く、ドラムもベースもしっかり絡んで、バンドとしてのまとまりが感じられます。キャメルを特徴づけるフルートも、美しく響いています。
私の知識不足もあって、メンバーそれぞれはミュージシャンとして有名な気がしないのですが、音楽的な素養は高いのではないかと思えます。実は演奏もかなり上手いのではないかと。
抒情性や感傷的な曲調で語られることの多いキャメルですが、このアルバムではロック・バンドとして魅力のある演奏を聴かせてくれています。
1曲目の迫力あるハード・ロックから、2曲目では持ち前の抒情性あふれるナンバーでウットリさせ、その延長で3曲目の大曲『Nimrodel』で、これぞキャメルという世界を堪能させてもらえます。
(Nimrodelというのはトールキンの小説「指輪物語」に登場する妖精、もしくは川の名前ですね。こうしたところから曲の着想を得るというのは、その後の『Snow Goose』につながっているように感じられます。)
キーボードとギターが激しくせめぎ合うインストの4曲目を挟んで、ラストは名曲『Lady Fantasy』。他の曲と比べても、より一層スケールの大きな抒情詩という感じです。
緩急のある構成、緊張感ある演奏、単音のギターが奏でる印象的な主題と、全体も細部も素晴らしく感動的な名曲です。
その後の抒情的に過ぎるアルバムよりも、このアルバムこそバンドのポテンシャルが発揮されていると推す人も多いようです。
確かに、激しさと静けさの両方を存分に楽しめるところは、このアルバムが高い評価をされている理由でしょう。
他のアルバムもどれもが良くて、ベストな1枚を選ぶのは難しいのですが、この『Mirage』は、キャメル入門には最適かもしれません。
投稿:2020.4.15
編集:2023.10.26
Photo by Simon Matzinger – Pixabay
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