『オリジン・オブ・シンメトリー』 ミューズ 2001年
発売当時、CDショップの視聴機で聴いて、すごいバンドが出てきたと思い、即買いしたアルバムです。出てきたと言っても、これはセカンド・アルバムですね。
私は、この時に初めて知りました。20年以上も前のことなのかぁ…。
シリアスでドラマティックな楽曲と歌い方が過剰な感じがして、なんだか芝居がかった印象を持ってしまったのは事実ですが、でもそこにはフェイクではない本物の凄みがありました。
レディオヘッドやコールドプレイとの類似性は、誰もが認めるところでしょう。
違っているのは、ミューズは演奏技術に長けたライブ・バンドだと感じられたことです。
アルバム全体を通して、スタジオ・ワークは申し分ありません。
楽曲の魅力を見事にまとめあげています。
しかし、楽曲の素晴らしさ以上に耳を持っていかれるのが、各曲で展開される、ギター、ベース、ドラム、ヴォーカルの演奏・歌唱の力です。
中でも突出して異彩を放っているのが、主にギターとヴォーカルを担当しているマシュー・ベラミーです。彼の芸術観がバンドを方向付けているのでしょう。アーティストとして、何か特別なものが感じられます。
クリス・ウォルステンホルム のベースも、大人しくボトムを支えるというよりも、ゴリゴリとメロディにからんできます。
芸術性の高さという面では前述のバンドに敵わないものの、溢れだす情感と演奏の肉体性では他を凌いでいるとさえ言えます。
実力派3ピースバンドと言うと、ラッシュも思い浮かびます。
プログレッシブな楽曲ながら、ハードロックのようなノイジーなギターが鳴り響き、ベースがブンブンとうねるところや高音のヴォーカルは似ています。
他にも其処此処に様々なバンドとの類似性を見つけることはが可能なバンドではありますが、だからといって、ミューズというバンドの個性が失われることは無く、むしろ魅力が際立って感じられるのは凄いところです。
視聴で気に入って即買いしたアルバムでしたが、実はあまり聴き込んではいませんでした。
あの頃はプライベートで結婚を控えていて、こうしたシリアスな音楽と向き合う時間が無かったのが理由だと思えます。
でも今、改めて聴いてみて、やっぱり素晴らしいバンドだと再確認できました。
このアルバムは、彼らの作品の中でも、ロック色の強い傑作だと思います。
ヒリついた感性やエネルギーが音楽となって空気と聴く者の心を震わせます。
若い時にしか作れない特別な輝きを持ったアルバムです。
表現が芝居がかって暑苦しかったり、この世界観に乗り遅れると気恥ずかしさを感じてしまうという面は否定できないので、家族や友人が集まるところで選曲するのは躊躇われますが、ひとりの時間やライブで没頭できたら最高です。
こういう音楽が好きだということは、誰かから否定されたくありません。
私だけでなく、きっと多くの人にとっても、ごく個人的に大切なバンドであることでしょう。
投稿:2020.9.23
編集:2023.10.31
Photo by Steinar Engeland
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