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『st.anger』 METALLICA

音楽

『セイント・アンガー』 メタリカ 2003年

このジャンルの第一人者であり、大物となったメタリカが、途中、カバー・アルバム「Garage.inc」(1998年)、オーケストラとのライブ「S&M」(1999年)を挟んだとは言え、前作「Reload」(1997年)から6年の期間をおいて発表した8作目。
この聖なる怒りを受け止めるには、聴く側にもそれなりの試練が必要です。

サウンドもリズムもメッセージも、全てが重く、分厚く、シリアスです。
その重量級の巨体を動かすためにスピードが多少犠牲にされたとしても、それはむしろ楽曲の緩急を生んでクオリティが高まったと思えます。

演奏は緻密で、破綻するところがありません。
ギターは相変わらず強靭なリフを繰り出していますが、ベースは自己主張を抑えたプレイに徹したようです。
ドラムはどこまでも重く響き、疾走感を維持しています。
ボーカルには表現の幅が感じられるようになり、バック・ボーカルは楽曲のクオリティに貢献しています。

ベーシストの交代にともなうイザコザがあったという話しもありますが、流れて来る音楽からは、彼らのブレない一体感が感じられます。
ほんのわずかな助走から一気に全員で走り出し、長いソロを披露することも無く、ゴール後にはバタンと力尽きる。
この演奏の潔さには、達成感というか、やり切ってやったぜという魅力を感じてしまいます。

これだけの圧を受け止めるには、集中力と体力が求められ、聴き終わった後は、くたくたになります。
ライブには行ったことがありませんが、いったいどうなってしまうのでしょう?

「魁‼男塾」とか「北斗の拳」のような、男臭さいロック代表ですね。
読んでいると印刷のインクで手が黒く汚れてしまいそうな、強烈な熱量の描き込みは、メタリカの音の隙の無さと似ています。
そんなわけですから、たぶん女性からの受けは良くないと思われます。(偏見ですが。)

ハードロックには、様式美に裏打ちされた耽美的で女性ウケも良い王子様系と、ゴリゴリ武骨なガテン系があって、アーティストのビジュアルは重要なポイントだったと思います。(もちろん偏見です。)
モーターヘッドAC/DCZZ TOPも、めっちゃカッコいいのに、日本ではダメです。

でも、いいのです。
スラッシュとかニュー・メタルなんていう洒落たカテゴリー名は、逆に似合いません。
漢と書いて男と読む。
真剣勝負なガテン系ロックの雄が、膨大なエネルギーを放つ重厚盤です。

私の手元にあるCDは、1時間以上のスタジオ・ライブDVD付きの3面デジ・パック(紙ジャケですね)でしたので、この機会に映像の方も観てみました。
まるで、豚骨醤油ベースに極太ストレート麺の家系ラーメン。
トッピングの少ない、濃いめ、脂多め、硬めで、お腹いっぱいになりました。



投稿:2020.7.4
編集:2023.11.4

Photo by David Rodrigues – Unsplash

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