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『SOME NIGHTS』 FUN

音楽

『サム・ナイツ』 ファン. 2012年

朝の情報番組で紹介されていたのが、CD購入のきっかけでした。
「We Are Young」という曲が売れて、グラミー賞まで取ったということと、曲の展開やボーカルがドラマチックでクィーンを彷彿とさせる、というのが話題のポイントだったと記憶しています。

これまで全く聞いたことが無かったので、バンドのデビュー作なのかと思いきや、実はセカンド・アルバム。そして、これが最後のアルバムでもありました。

急に大きな成功を手にして、逆にエネルギーを失ってしまったのか、バンドの内外に何か乗り越えられない問題があったのか、実際のところは何も分かりませんが、良いポップセンスを持っていただけに残念です。
 
この時代、誰がプロデュースしたかということが、アーティスト自体よりも重要であるかのように語られる風潮がありました。
音楽制作に長けたプロデューサーが、自らのヒットの法則を駆使してマーケットの求める音楽を大量生産するわけです。
アーティストの側も、トレンドの音を求めて彼らに群がってゆきます。
私自身、この音の感じが好きだというプロデューサーはいますので、そのことを否定する気はありません。
ただ、そんな音楽マーケットに現れた FUN.は、アーティストとのしての個性を感じさせてくれるバンドだと、嬉しく思ったのを覚えています。
(と言いながら、このアルバムは、ちゃんと人気プロデューサーが仕事していますが。)

初めて聴いた時は、ボーカルが フレディ に似ているというよりも、曲作りに演劇的な展開があることや、バンドのコーラス・ワークが クィーン を思い起こさせるのだろうと感じられました。
ひょっとして大成すればフォロワーも生まれて、1980年代のネオアコ・ブームにおける ペイル・ファウンテンズ みたいにならないかなと思ったりもしたのですが、その思惑は外れました。

1曲目のドラマティックなボーカルとコーラスは、まさに クィーン のようでもあり、同タイトルの2曲目へつながるテーマの展開は、実に見事です。

表題曲の3曲目は、当時、アメリカで勢いのあった女性アーティスト、ジャネール・モネイ を迎えて、売る気満々です。
(本当のことは分かりませんが、顔の広い売れっ子プロデューサーが、当時のトレンドに乗った彼女を起用することで、シングル・ヒットを狙いに行ったのだろうなと、いやらしいことを考えたりしてしまいます。)
繰り返される歌詞はシンプルですが、あまり良好ではないシチュエーションを浅い思慮とカラ元気で乗り切ろうとしているようです。
まあ、そんなところも含めてヤングなんだな、ということでしょうか。
この青臭さのおかげで、ティアーズ・フォー・フィアーズ の偽物っぽくならなくて良かったと思えます。
ミュージック・ビデオでは存在感を示していた ジャネール・モネイ ですが、CDではいまひとつ彼女の魅力が聴き取れないのが残念でした。
でも、FUN.の曲としては問題ありません。
間違いなく、売れる味付けにはなったことでしょう。

その後も、ボーカルの ネイト・ルイス の魅力が上手く引き出されています。
曲に合わせて、抑揚をつけ、時にシャウトし、裏返るヴォーカルは、とても魅力的です。
あえてヴォーカルにエフェクトをかけたり、コーラスで盛り上げたり、音へのこだわりも感じられます。
改めてCDを聴き終えて、まるで良質なミュージカルを楽しんだような気持ちにさせてもらえました。

最初に、「アーティストの個性を感じさせてくれるバンド」と書きましたが、個性があるのはヴォーカルの ネイト・ルイス で、アルバムのクオリティを高めていたのはプロデューサーの ジェフ・バスカーの力だっだのではないかと思い直しました。
第55回グラミー賞で、最優秀楽曲賞と最優秀新人賞の2部門を獲得しただけのことはあります。

バンドとしては2枚のオリジナルを残しただけで、高いクリエイティビティを継続することはできませんでしたが、このアルバムは1曲目から最後まで彼らのポップ・センスとアイデアが詰め込まれ、いきいきとした歌唱が楽しめる良盤です。
このタイミングで、ファースト・アルバムも聴いてみましたが、こちらも良い出来でした。ますます惜しい。

例えで出してしまったので、こちらも紹介しておきます。
比較するのは野暮ですが、こちらもエバー・グリーンな名盤です。

投稿:2020.6.13
編集:2023.10.31 

Photo by Ayo Ogunseinde – unsplash

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