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『A Scarcity of Miracles』A King Crimson ProjeKct

音楽

『ア・スケアシティ・オブ・ミラクルズ』 ア・キング・クリムゾン・プロジェクト 2011年

キング・クリムゾンロバート・フィリップは、以前どこかで「私がメンバーを選ぶのではなく、キング・クリムゾンがその時に必要な人を指定してくる」というようなことを言っていた気がします。
キング・クリムゾンという音楽が主体であるので、自分を含めたメンバーはあくまで音楽に仕える身であり、個人の主観的な表現が主体になるのではないということなのでしょう。

このアルバムは、キング・クリムゾンではなく、派生プロジェクトのひとつ ア・キング・クリムゾン・プロジェクト の作品です。
メンバーには、メル・コリンズトニー・レヴィンジャッコ・ジャクジクの名前があり、キング・クリムゾンのDNAを持ったバンドであることは間違いありません。
しかし、このバンドは結局キング・クリムゾンを名乗るには至らないまま、あくまでプロジェクトとしてリリースされたわけです。

ヌーボー・メタルを掲げて固く激しいサウンドを展開した90年代以降のキング・クリムゾンは、『THRAK』『The ConstruKction of Light』『The Power to Believe』という非常に充実したアルバムをリリースし、ライブ活動も高く評価されていました。
しかし解散こそ明言されなかったものの、アルバム制作への意欲は失われたのか、新作の話しは聞こえてきませんでした。

そんな頃に届けられたこのアルバムは、メンバーにメル・コリンズが含まれていたことから想像はできたものの、思った以上に静的でおとなしい作品でした。
怒り狂ったように鳴っていたロバート・フリップのギターは、すっかり控えめです。
トニー・レヴィンは個性的な面も聴かせますが、それでも彼にしては地味な印象です。
代わりに活躍しているのが、ジャッコ・ジャクジクメル・コリンズでした。

キング・クリムゾンの持っていた哀愁は随所に感じられますが、楽曲としてのインパクトは弱く、バンドとしての注目ポイントがありません。
CDの帯に「キング・クリムゾンの最終形態、ついにその姿を現す!」と書かれていましたが、レコード会社の方は本当に音を聴いてそう思ったのでしょうか?
個人的には70年代キング・クリムゾンが持っていた抒情的な面が好きなので期待をしたのですが、期待が高すぎてしまったようです。

この時期、メタル・クリムゾンからの進化を模索するロバート・フリップは、これ以外にも様々なプロジェクトを立ち上げ、実験を繰り返していました。
そちらには、プロジェクトと割り切れば、興味深く聴きごたえがあるものが実はいくつも存在しています。
また時期は違いますが、ブライアン・イーノデヴィッド・シルビアンとの試みも非常に価値のあるものでした。

このアルバムにロバート・フィリップが可能性を感じたのかどうかは分かりませんが、結果としてジャッコ・ジャクジクメル・コリンズトニー・レヴィンは、その後のキング・クリムゾンのメンバーとなってライブ活動してゆくことになります。
新作を作らずにライブを行う高齢者バンドとなったキング・クリムゾンにおいて、21stセンチュリー・スキッツォイド・バンドで昔の曲を演奏していたジャッコ・ジャクジクメル・コリンズは、とても重宝したことでしょう。

なんだかコメントが意地悪になってきてしまいました。
気持ちを入れ替えて、ジャッコ・ジャクジクメル・コリンズのアルバムだと思って聴きましょう。

Spotifyでは、キングクリムゾン名義でこのアルバムを探すことはできませんでした。
アルバムに書かれている A King Crimson ProjeKct で検索しても出てきませんでしたが、Jakko M.Jakszyk で探すと見つけられます。

投稿:2020.4.19 
編集:2023.10.19

Photo by andrea-lightfoot -unsplash

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