『アクセラレイト』 R.E.M. 2008年
前作から4年の時間が経っていました。
ここのところ、R.E.M.の音楽は老成したという感じで、メンバーの年齢的にも、もうこのスタイルで行くんだろうなと思っていたのですが、このアルバムには驚かされました。
CDを再生したとたんに飛び出したのは、ハードでパンクなガレージ・サウンドだったのです。
前作が商業的に成功しなかったことが反省材料になったのか、50歳を前に「まだまだ若いもんには負けん」と奮起したのか、いずれにしても若々しく勢いのある演奏です。
歌詞は前作以上に辛辣にブッシュ政権を批判しています。
ただ、怒りをぶつける手法としてパンクなサウンドを選んだというよりも、今回、このアルバムはこういうスタイルで行こう、とコンセプトを決めて実行した感があります。
アルバム全体のまとまり感があるのです。
最近(と言っても10年くらい)のR.E.M.のアルバムは、60分を超えるものが珍しくなく、かなり聴きごたえのある作りでした。
ところがこのアルバムは初期の作品のような短さで、アルバム全体で35分弱しかありません。
収められた11曲は全てが3分前後と短く、どの曲も疾走感があります。
バラード曲でさえ甘ったるくならず、潔い印象なのです。
ピーター・バックのギターは歪みを効かせていますし、マイケル・スタイプのヴォーカルはシャウトしています。
ご機嫌なのはマイク・ミルズのベースで、縦横無尽に走り回っていて最高にカッコいいです。
変な話し、ベースが歌っているので、ギターやヴォーカル以上に耳を持っていかれます。
そしてやはり触れないわけにいかないのが、ビル・ベリーを失って以降フューチャーされていなかったドラムスが、楽曲の中心でしっかりリズムをたたき出していることです。
アルバムを通して、まるで小規模なライブハウスでのギグを観るように楽しめます。
当時、私がこのアルバムで感じたのは、原点回帰ではなく、新たな発展としてのバンド・サウンドでした。
やっぱりR.E.M.は変化し続けるバンドなのだと嬉しく思っていた私は、この時、ここに崩壊の兆しを感じることはできないでいました。
2023年の今となっては15年も前の作品なのですが、時間が経っても色あせないエバー・グリーンなロック・アルバムです。
聴いていて気持ちいい。
投稿:2020.5.8
編集:2023.11.3
Photo by Jordan Merrick
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