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『UNION』 YES

音楽

『結晶』イエス 1991年

CDを買っても結局聴きこむことのなかった80年代以降のイエスですが、この『UNION/結晶』が出た時は本当に期待して聴きました。

前々作『90125』、前作『BIG GENERATOR』では、「イエスは本当に終わってしまったんだな」と思わされたのですが、今作ではジャケット・デザインがロジャー・ディーンになりました。
これは、実は古くからのファンにとって大きくて、音楽を聴く前段階で期待感が高まりました。

さらにメンバーの豪華さは目が眩むほどで、大好きなアーティストがずらりと並んでいます。
なにせ、ABW&H90125イエスのメンバーが集結しています。
その上、分裂していた時期に親しくしていたアーティストもセッションに参加したので、サポート・ミュージシャンも凄いメンツです。
名前を挙げるだけで長くなるので省略しますが、まあ、凄いです。

実際には”ビジネス再結成”という面は否めないのですが、ファンにとっては嬉しい復活でした。

ただ、購入当時の記憶では「すごくいい」と思っていたにもかかわらず、なぜかあまり聴きませんでした。
というわけで、今回、久しぶりに聴き直しています。

「うん、いいぞ」「なるほど」と聴き進めてゆくうちに、なんというか、だんだん、大盛りどんぶりに濃い味付けでお腹いっぱい、という感じになってきました。
私が年を取ってしまったからだとは思うものの、再結成でしか到達できないバンドとしての創造性を感じる瞬間は訪れません。

ただ、昔の思い入れを排除して聴いてみると、それぞれの曲は良いと思えます。
かつてのイエスへの想いが、評価を辛くしがちなのかもしれません。

曲が単調なわけではなく凝った作りですし、激しいロックからスローなナンバー、実験的な短いインストもあり、バラエティに富んでもいます。
先に”大盛りで濃い味付け”と書いてしまいましたが、なんだか寿司もラーメンもトンカツも出すフードコートのようでもあります。
何曲かはシングル・ヒットもしたので、こういう作りが良いと感じる方も多くいたのでしょう。
時代は90年代に入っていたのです。

ただ、おじさん世代のイエス・ファンとしては、ジョン・アンダーソンはシャウトしすぎだとか、クリス・スクワイヤビル・ブルーフォードの個性が感じられないとか、リック・ウェイクマンにはもっと弾きまっくて欲しかったなどと思わないわけではありません。

曲ごとに世界観が違って聴こえることを、”バンドとしての統一感の無さ”と取るか”バンドの持つ多様性”と取るかでしょうか。
メンバーの個性が混ざりきっていないと言えば、名作『FRAGILE/こわれもの』だって、混ざり合ってはいないと感じられます。
だから悪い、ということにはなりません。

ただ、なんとなくですが、やっぱりバンドとしての結束は感じにくいのです。
これだけのメンバーが集結したら、どんなに凄いものができるかと思いきや、なんだかオールスターの親善試合みたいで、とてもバンドとして結晶はしていなかったのが残念です。

こういう作品だという総括ができないせいで、アルバムとしての思い入れを持ちにくいですが、決して平凡でつまらないアルバムではありません。
名だたる名プレーヤーであれば結束しなくてもこのクオリティは出せるという、一聴の価値はあるアルバムです。

投稿:2020.3.28  
修正:2023.10.28

Photo by Filbert Mangundap – Unsplash

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