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2023年にリリース30周年を迎えたアルバム・私的TOP50

音楽

1993年リリースの名盤

今年の春に、2023年に50周年を迎えるアルバムから思い入れの強いものを50枚選んでみた後に、「30周年、40周年っていうのもあるよなぁ」と思って書き始めました。
ところが、どうしたわけか途中まで書いて公開しないままでいたので、今頃になって慌ててアップします。

50周年の記事はこちら。

2023年にリリース50周年を迎えたアルバム・私的TOP50
1973年リリースの名盤 ここのところ、ピンク・フロイドの『狂気』50周年に関するニュースを多く見聞きします。50年前はまだ小学生でしたので、海外の音楽を聴く機会といっても、ラジオで流れてくるものを偶...

30年前というと、私は29歳から30歳になった年でした。
その頃は仕事漬けの毎日で、どちらかというと音楽からは離れていた時期でした。
それでも、この年に(又は数年後に)聴いて、今も思い入れがあるものを50枚選んでみました。
順位は音楽の良さではなく、私の思い入れというか思いつきですので順不同です。

驚異のデビュー・アルバム、セカンド・アルバム 15 欧州編

1.Suede – Suede

バンド名をタイトルに冠したデビュー・アルバム。
Tレックスやデヴィッド・ボウイ、ジャパンなどから現代のマネスキンにまでつながる、なまめかしくも美しいロックを90年代に代表していたバンドです。
ボーカルのブレッド・アンダーソンとギターのバーナード・バトラーの化学反応が素晴らしい名盤。
これぞロックと定義したいくらい気に入ったアルバムでした。

2.Radiohead – Pablo Honey

その後、21世紀を代表するバンドにまで成長するモンスターの放ったデビュー・アルバム。
エネルギーと創作意欲に溢れた芸術的な傑作ながら、リスナーとの共感が築きやすい曲が並んでいて、聴きやすい仕上がりになっています。
オルタナティブな立ち位置でしたが、シューゲイザー好きな私は一瞬で好きになりました。
名曲「Creep」にやられた人は、生涯忘れられないアルバムとしてこの作品を挙げることでしょう。
私はやられました。

3.Björk – Debut

このアルバムでソロ・デビューする前、ザ・シュガー・キューブスの頃から気になって聴いていたアーティストでした。
実際、いつが彼女のデビューなのかは曖昧ですが、アルバム・タイトルでそう言っているので、これが彼女のソロ・デビュー・アルバムとしましょう。
生まれながらに芸術家で、作品やライブだけでなく、その存在そのものがアートだと言える希有な存在。ピカソとか草間彌生とか、そういった類いの方です。
このアルバムは彼女のソロの中ではポップで聴きやすく、人に勧められる数少ない作品のひとつです。
これ以降、彼女の芸術性は牙を剥くことになります。

4.Jellyfish – Spilt Milk

活動期間わずか4年ほどの短命なバンドでしたが、鮮烈な印象を残してくれました。
このアルバムは、彼らの2枚目にしてラスト・アルバム。名曲揃いの名盤です。
ボーカルのアンディ・スターマーは、日本のパフィーや奥田民生、YUKIらとの交流でも知られていますね。実は他のメンバーも、しっかり音楽業界で仕事しています。
通好みな作品と言えるかもしれません。

5.Slowdive – Souvlaki

マイ・ブラッディ・バレンタインのシューゲイザー・サウンドとコクトー・ツィンズのドリーム・ポップをミックスしたような、幻想的なロック。
こういうのが好きな人には、たまらないでしょう。私は大好きでした。
好き嫌いが分かれてしまうのは仕方ないとしても、若い人にも聴いて欲しいアルバムです。
バンドは3枚のアルバムを出しただけで解散(その後、再結成)してしまいましたが、ボーカルのレイチェル・ゴスウェルと数名は別のバンド、Mojave3 を作って活動を継続。フォークロアな感じで、そちらも良いバンドでした。

6.The Verve – A Storm In Heaven

90年代末のイギリスでは、オアシス、ブラーと並ぶほどの人気があったバンドのデビュー・アルバムです。
その後のロック的なアプローチやブリット・ポップ的な楽曲の良さによって評価を高めるわけですが、私はこのファースト・アルバムで聴けるシューゲイザー・サウンドが好きなのです。

7.The Cranberries – Everybody Else Is Doing It, So Why Can’t We?

ケルティックな歌声が美しいドロレス・オリダーリンを擁するアイルランドのポップ・ロック・バンドのデビュー作。
シングル・カットもされて日本でもヒットした「ドリーム」は、このアルバムに入っています。
もう彼女の新しい歌を聴けないのは残念でなりません。

8.Manic Street Preachers – Gold Against the Soul

様々な困難を乗り越えながら活動を続けているマニック・ストリート・プリーチャーズが、バンドをスタートさせたのが1992年。
日本では好意的なレビューが掲載され、この2作目も高く評価されていました。
もっとアート・ロックな感じなのかと思って聴いたら、けっこうストレートなロック・サウンドで期待外れだった第一印象でした。
でも良いものは良いのです。良い曲を作れる、良いバンドです。
結局、何度も聴きこむことになり、その後もずっとCDを買い続けることになりました。

9.Blur – Modern Life Is Rubbish

90年代のブリット・ポップ・ムーブメントを代表するバンドの2作目。
XTC「Orange & Lemmons」やエルビス・コステロ「Spike」のような、イギリスらしさを感じるパワー・ポップに飢えていた層が、こぞって飛びつきました。
実際、ブラーはこのアルバム以降、イギリスの音楽トレンドを牽引する存在になります。
XTC、エルビス・コステロ、モリッシー、R.E.M.、オアシスなどなど、この時期のイギリスは本当に魅力的でした。
そうした中にあって、このアルバムが特別に語られることは少ないかもしれませんが、お約束として聴いておきましょう。

10.The Boo Radleys – Giant Steps

デビュー当初から音楽オタク的なバンドで、いろいろなタイプの音楽を作り出していました。
ジョン・コルトレーンのアルバムと同じタイトルがついたこのアルバムは、彼らの2枚目。
日本ではほとんど話題になりませんでしたが、なんだか才能あるバンドを見つけたような気分で聴いていました。
1995年にリリースされる次作からシングル・カットされた「ウェイク・アップ・ブー!」が大ヒットして日本でも知られることになりますが、タイトルがなぁ・・・。

11.PJ Harvey – Rid of Me

P.J.ハーヴェイのデビュー作は、新たなオルタナの女王が生まれたと感じさせるに十分な作品でした。
スティーブ・アルビニというプロデューサーは、こういうグランジ系の音を扱うのが上手くて、同時期のニルヴァーナのアルバムと同じく、ここでもダークで凶暴で生々しい音を作り出しています。
初めてCDをかけた時に、音が小さいと思ってボリュウムを上げて聴いていたら、途中から急に爆音になってビビりました。
あまり売れ筋な音楽ではありませんが、オルタナティブなロックを求めるリスナーにとっては衝撃でした。
第一印象で、なんだか恐い女性だと刷り込まれてしまったアルバムでした。

12.エニグマ『The Cross of Changes』

電子音楽をベースに、民族音楽やグレゴリオ聖歌などをミックスして新しいヒーリング・ミュージックを提示してみせた音楽ユニットの2作目。
クラブで大音量で聴いて陶酔するもよし、ボリュームを絞ってBGMにするもよしということで、この手の音楽としては異例の大ヒットとなりました。
実に戦略的です。そして、けっこう出来は良いのです。

13.Us3 – Hand on the Torch

バンド名や曲名は知らなかったとしても、ある年齢層の方であれば、ハービーハンコックの「Cantaloupe Island」をカバーした「Cantaloop (Flip Fantasia)」は、どこかで一度は聴いたことがあるでしょう。原曲よりも、こっちの方が耳にする機会が多いくらいです。
JAZZをサンプリングして、ヒップホップな味付けでゆるく踊れる感じに仕立て上げると、なんだか都会のイケてる感じの音楽が出来上がります。マジでカッコイイ。
その後、夜遊び好きはこういう音楽が心地よくなって、ファンタスティック・プラスティック・マシーンなどへの流れができてくるのですね。(知らんけど。)

14.Jamiroquai – Emergency on Planet Earth

ジャミロ・クアイはこのアルバムでデビューしました。衝撃的な登場でした。
懐かしいグルーヴなのに、新鮮で最先端な感じ。パッションが弾けながら、心地が良くてハイセンス。
「こりゃ流行るわ」と思った頃には、あっという間に日本中でヒットして、アシッドジャズはお洒落な音楽の代名詞となりました。
PVも有名になった「ヴァーチャル・インサニティ」が大ヒットするのは、実はこの3年後ですが、すでにもう目が離せないアーティストでした。

15.ANEKDOTEN – VEMOD

現代において、プログレッシブ・ロックが新たな形で展開されているのは、このアネクドテンがいたからだと言えます。それほど重要な北欧(スウェーデン)バンドのデビュー・アルバムがこれでした。
プログレ好きでないと聴く機会は少ないかもしれませんが、この時代のグランジやオルタナのダークでノイジーな響きを取り入れつつ、70年代プログレの持つ抒情性や音の美しさを織り込んで、スリリングに展開する複雑な楽曲は、どれも本当に見事です。
この時代のどの音楽トレンドにも乗っていない代わりに、今聴いても古さを感じない孤高の傑作です。

驚異のデビュー・アルバム、セカンド・アルバム 10 北米編

16.Smashing Pumpkins – Siamese Dream

スマッシング・パンプキンズのデビューはニルヴァーナと時期的に近かったために、どうしても比較されがちでした。
このアルバムはスマパンの2作目。
基本的にはオルタナティブなサウンドが魅力ですが、このアルバムからは「トゥデイ」のようなポジティブな曲がヒットしたことで、有象無象のグランジ・バンドから抜け出すきっかけがつかめます。
次の大ヒット作「メロンコリーそして終りのない悲しみ」へ至る過渡期的な作品という位置づけにはなるものの、この頃の荒々しいサウンドが好きなファンは多いのではないでしょうか。
個人的には、ニルヴァーナよりもスマパン推しでした。

17.The Breeders – Last Splash

ピクシーズのキム・ディールが新しく始めたバンドの2作目。
歪んだギターにドタドタしたドラム、抑制の効いたボーカルの組み合わせがインディーのオルタナらしく、変なところに力が入っていない脱力感と相反するヘビーさが若々しくて気持ちがいいです。
少しシューゲイザーっぽさも感じられて、若い時に聴いていたら間違いなくハマっただろうと思えた、侮れない作品です。

18.Pearl Jam – Vs.

グランジ・ブームに沸く北米のロック市場で、ヘヴィネスが強く音楽的だったパール・ジャムは大人気でした。
デビューからの3作、「Ten」「Vs.」「Vitalogy」を、グランジ三部作と呼ぶ向きもあるそうです。
日本ではあまりにも骨太なロックは女性や若年層に受けが良くないように思えますが、案の定、北米とは温度差があったように思えます。
ただ、グランジと括られてはいても、音楽的にはハード・ロックの様式も感じさせるヘビー・ロックで、私のようなおじさん世代には受け入れやすいバンドでした。

19.TOOL – Undertow

フェイス・ノー・モアに似てるな、というのが最初の感想でした。
ハードロックの様式美とは違う、何か新しいヘビーネスを感じたものの、あまり深掘りせずにいました。
2001年に出た「Lateralus」がハード・プログレの傑作だったことから、過去作を改めて聴いて評価を見直したという感じです。
このアルバムはトゥールの2枚目ですが、グランジやオルタナティブのバンドと並列で語るのではなく、特殊なポジションにいるプログレッシブなバンドだと思った方が良いでしょう。

20.HAREM SCAREM – Mood Swings

ハーレム・スキャーレムは、カナダのハードロック・バンド。
歪んだギターサウンドとシャウトするボーカルに加えて、抒情的なメロディや美しいコーラスが魅力で、日本人受けしそうなバンドでした。
この2作目は、時代が時代ならメジャーなヒットになっていてもおかしくないと思えるほど各曲の出来が良いので、ハードロック好きには気に入ってもらえると思います。
当時トレンドだったグランジではなく、ひと昔前の産業ロックに近い感じです。

21.Liz Phair – Exile in Guyville

リズ・フェアのデビュー・アルバムです。
名盤かと言われると、そこまでとは思えないのですが、リリースされた時は話題になりました。
若い女性の赤裸々な本音を歌う、ある種のフェミニズムな匂いが支持を集めたところであり、嫌悪を示されたところでもあったでしょう。
ビヨークやP.J.ハーヴェイなどと比べたら音楽は聴きやすかったので、私自身は、いい感じに新しいのが出てきたと思って聴いていました。才能を感じさせます。
ただ、これしか聴いてないのですが。。。

22.Sheryl Crow – Tuesday Night Music Club

彼女の名前がタイトルになっているアルバムはセカンドで、実はこっちがシェリル・クロウのデビュー作なんですね。
その後、あっという間に名だたる賞を獲得してトップ・ボーカリストになる彼女ですが、このアルバムはまだ手作り感のある仕上がりです。
でも名だたるアーティストのバック・ボーカルを務めていた歌唱力は本物で、デビューとは思えないほど安心して気持ちよく聴くことができます。

23.Toni Braxton – Toni Braxton

ベビー・フェイスに見いだされてソロ活動を開始したデビュー作。
この後、立て続けにヒットを連発するのですが、いつの間にかいなくなってしまいました。
意外な選曲ではありますが、うっとり系の歌モノは好きなのです。

24.Guru – Jazzmatazz Volume 1

ヒップ・ホップ・グループ、ギャングスターにいたグルーのソロ・プロジェクト、第一弾。
アシッドジャズをラッパーが米国流で解釈すると、こんなにカッコ良いものができるということに驚きます。
リリースした時点で古典のようであると同時に最先端であった音楽ですが、今の時代に聴いても、同じような感覚を覚えます。実験作であり名作。

25.Discipline – Push & Profit

あまり情報が無いのですが、アメリカのプログレ・バンドのデビュー作です。
ディシプリンというバンド名から、ニュー・ウェイブ期のキング・クリムゾンに近い音なのかと思いきや、シンフォニックでメロディアスな70年代風でした。
音楽トレンドとは逆行していますが、それだけに希少価値がありました。
こういうのが好きな人は、いつの時代にも一定数はいるものです。

アーティストの存在感を示した名盤 15

26.Sylvian & Fripp – The First Day

ジャパン解散後、ソロとして芸術的な作品を発表していたデヴィッド・シルビアンと、キング・クリムゾンのロバート・フィリップがコラボして発表された作品。
キング・クリムゾンはニューウェイブ3作を終えて次のステップに進む過渡期にあり、このコラボはロバート・フィリップにとって刺激になったようです。
以前から交流があった二人ですが、ロバート・フィリップはデヴィッド・シルビアンをキング・クリムゾンに誘っていたという話しもありますし、実現していたらと思うとドキドキしますね。
このアルバムのメンバーには、トレイ・ガン(スティック)やジェリー・マロッタ(ドラム)の名前があり、このままいけそうです。
そういうわけですから、内容は最高です。
発売された当時は混乱しましたが、その後のキング・クリムゾンの展開を知っている今となっては、このアルバムの重要性はより際立って感じられます。
あまり知られていない作品だとしても、プログレ好き、キング・クリムゾン好きな方には是非聴いて欲しいです。
今回、このブログ・テーマでCDを聴き直して、最も評価が改まったアルバムかもしれません。

27.Kate Bush – The Red Shoes

今年、Netflixで配信されたドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』で「Running Up That Hill (A Deal with God)」(1985年)が使われて再注目されたケイト・ブッシュですが、彼女が1990年代に出した唯一のアルバムがこれです。
ピンクフロイドのデヴィド・ギルモアによって発掘された才能だという話しは有名で、デビュー時から独特の世界観を持つアーティストとして一目置かれる存在でした。
このアルバムは、この時期の音楽トレンドを多少意識した作りになっていて、彼女の作品の中ではポップな印象です。
意外だったのは、ジェフ・ベック、エリック・クラプトン、プリンスというジャンルが違いそうなアーティストが参加していたことで、そのせいかボーカルも鬼気迫るという感じではありません。
プロコル・ハルムのゲイリー・ブルッカーのオルガンもいい感じです。

28.Nirvana – In Utero

泣く子も黙るニルヴァーナのメジャー・デビュー2枚目にしてラスト・アルバム。
(デビュー前に、インディーから1枚出しているので、厳密には3枚目ですね。)
プロデューサーは、グランジの立役者スティーブ・アルビニ。
前作「ネヴァーマインド」の大ヒットでグランジ・ムーブメントのトップに祭り上げられたニルヴァーナは、その天邪鬼な性格からか極度のストレスからか、次のアルバムで暗くて救いの無いインディー・サウンドを展開して、せっかく獲得した”にわかファン”を困惑させます。
でも、なんだかこっちが彼らの本質な気がします。

29.Duran Duran – Duran Duran(The Wedding Album)

その容姿やデビュー時の音楽スタイルから、アイドル的な評価をされているデュラン・デュランは、実はアーティスティックで音楽性の高いロック・バンドです。
80年代の輝きが眩しすぎたせいで、90年代に入ってからは人気に陰りを感じてしまいますが、このアルバムはバランスの取れた良盤でした。
ミルトン・ナシメントと共作した(?)「Breath After Breath」や、ルー・リードの「Femme Fatale」のカバーなど、異色な曲で彼らの音楽的バックボーンにも触れることができます。
地味ながら、個人的には高く評価していました。

余談ですが、この2年後にリリースされた「Thank You」は、全てカバー曲で構成されたアルバムでしたが、驚くほど素晴らしい出来でした。ロック好きなら必聴です。

30.BRIAN ENO ‐ Neroli

1970年代後半から取り組んできたアンビエント・ミュージックの、ある意味での完成形と言える作品です。
精神を安定させるハーブの名前をアルバムのタイトルに掲げています。
大学の卒論のテーマに「環境と音」を選んだ私としては、非常に興味深く聴きました。
今も時々聴きます。
余談ですが、個人的に一番好きなイーノのアルバムは「Ambient 1: Music for Airports」です。

31.Aztec Camera – Dreamland

1980年代初期の、ポスト・パンク、ニュー・ウェーブにはいくつかの方向性があり、そのひとつにネオアコと呼ばれる、アコースティックで穏やかな音楽ジャンルがありました。
アズテック・カメラはその筆頭に数えられていたバンドで、フロントマンのロディ・フレイムはアイドル的な人気もありました。
このアルバムは彼らの5作目。
ネオアコのブームは冷めて、音楽のトレンドは攻撃性の強いグランジやシニカルなブリットポップに移っていました。
しかし、ここで聴けたのはアズテック・カメラの良い面を集大成したような音でした。
プロデュースには、坂本龍一が招かれていました。
どこまでも優しく穏やかで、少年の純粋さを失わないエバーグリーンなポップスを楽しめます。

32.Rush – Counterparts

カナダの3人組バンドの15作目。
ラッシュほどのバンドでも、当時の音楽トレンドの変化に試行錯誤していた時期で、今作はグランジの影響を受けたのか、プログレ的なアプローチよりもギター・ロックという印象。
どんなラッシュが好きかは好みが分かれるかもしれませんが、これはこれでアリでしょう。

33.Meet Loaf – Bat Out of Hell II

デビューから約20年のキャリアで、7作目にあたるアルバム。邦題は「地獄のロック・ライダーⅡ~地獄への帰還」。1977年にリリースしたロック・オペラ「地獄のロック・ライダー」の続編とも言える作品です。
大仰で演出過多な作風が気恥ずかしいと感じてしまったらアウトですが、演劇的な世界観を堂々と歌い上げる外連もロック・ショウの醍醐味だと受け入れれば楽しめます。
実際、リアルな心の叫びを上げていたグランジが大きなパワーを示していたこの時期にあっても、このショウ・アップされたアルバムは売れました。
個人的には、ロック・オペラは好きなのでOKです。

34.Aerosmith – Get a Grip

デビューから20年目に発表された11作目。
信じられませんが、これがエアロスミスにとって初めてのビルボード全米チャート1位になったアルバムでした。
ベテランの風格と現役トップのエネルギーが漲る傑作で、タイトル曲だけで無く「リヴィング・オン・ジ・エッジ」「クライン」「クレイジー」「アメイジング」など、立て続けにヒットしました。
来日公演も行きました。今聴いても熱くなります。

35.Motorhead – Bastard

「女にモテようと思って、フュージョンとか聴いてるやつがいたんですよー。」
「なぁーにぃー。やっちまったな。漢は黙って、モータヘッド!漢は黙って、モータヘッド!」
という訳で、何があっても、モーターヘッドはモーターヘッドです。
そんな筋の通った彼らの作品の中でも高評価だった12作目です。
確かにモテなそうです。

36.Sting – Ten Summoner’s Tales

ポリスからソロになって4枚目のスタジオ・アルバム。
ジャズに傾倒するかと思われましたが、普通に聴きやすいポップ・アルバムでした。
映画『レオン』で使われて強い印象を残した「シェイプ・オブ・マイ・ハート」をはじめ、収録曲はどれもが一級品。
こういう音楽が似合う大人になりたいと思ってしまうアルバムです。

37.Van Morrison – Too Long in Exile

北アイルランド、ベルファスト出身のベテラン・シンガーが、1960年代、70年代の名作とは趣を変えて、渋いブルースを聴かせてくれる名盤です。
ヴァン・モリソンの歌はもちろん、バックバンドの演奏もいい感じで、まるでライブを聴いているようです。
実際、この翌年には、ライブ盤が出るのですが、これがまた素晴らしいのです。

38.Janet Jackson – janet.

彼女の評価は”兄(マイケル・ジャクソン)の七光り”だと誤解されているとしたら大間違いです。
ジャネット・ジャクソンのアルバムはどれも上質で、特に1986年の「コントロール」、1989年「リズム・ネイション」から続くこのアルバムは、素晴らしい曲と彼女の歌を味わえる名盤です。
その後も「ザ・ヴェルベット・ロープ」「オール・フォー・ユー」と名作を連発しますが、このアルバムで彼女の魅力はひとつの完成形を迎えたと思えます。
個人的には、「The Time」という曲に大好きなオペラ歌手キャスリーン・バトルが参加していることが嬉しかった作品です。

余談ですが、日本のCMで使われていたキャスリーン・バトルの歌うヘンデルの「オンブラマイフ」は、最高でした。
この時代、オペラというジャンルにおいて、黒人であることはハンデだったはずです。
また声量が必要とされる歌唱にもかかわらず、彼女は細身で線が細かったのです。
しかし、逆に繊細さの中にある芯の強さが美しいと感じていました。
↓キャスリーン・バトル

39.Mariah Carey – Music Box

1990年にデビューしてからの20年間は人気・実力ともに圧倒的で、まさに無双状態でした。
このアルバムは彼女のサード・アルバム。もちろん世界中で売れました。
前年にホイットニー・ヒューストンが映画『ボディガード』の主題歌「オールウェイズ・ラヴ・ユー」をヒットさせて、ナンバー1歌姫の評価を獲得していましたが、マライアはこのアルバムであっさりと逆転してみせました。
いわゆるディーバ(歌姫)の中ではチャーミングでポップだったので、日本でも好まれました。
こういう超メジャーな音楽を素直に聴きたがらない天邪鬼な私でさえ、流石だと認めてしまいます。
「Hero」が白眉なのは言うまでも無く、他の曲もこの時期のアメリカが作り出していた最も上質なポップ・ミュージックだと言えるでしょう。

40.Lenny Kravitz – Are You Gonna Go My Way

1991年のセカンド・アルバム「ママ・セッド」の後、1992年にはヴァネッサ・パラディの名作「Vanessa Paradis」をプロデュースして、さらにその翌年に出したのがこの「自由への疾走」でした。
もう、才能が爆発してノリノリです。悪いはずがありません。
アルバム・タイトル曲「Are You Gonna Go My Way」のギター・リフは、ギター・キッズの必修科目になるほどポピュラーになりました。
激しいロック・ナンバーも、しっとりと聴かせるスロー・バラードも、全てに気持ちが入っていて聴く者の心をとらえる名盤です。

個人的に贔屓したい良作 10

41.Teenage Fanclub ‐ Thirteen

出だしからニヤリとさせられる爽快なギター・リフでスタートする、ティーンエイジ・ファンクラブの3作目。
1980年代初頭にヨーロッパでブームとなったネオアコやギターポップの流れをくむ音楽性で、エバー・グリーンな青春ソングのオン・パレードです。
90年代のイギリスは、オアシスやブラーというブリット・ポップが席巻するのですが、そうした中にあっても独自の世界観で支持され続けた良いバンドです。

42.The Flaming Lips – Transmissions From the Satellite Heart

1980年代半ばから活動を開始した変態的な音楽集団が、メジャーなレーベルと契約して出した6作目のアルバム。
良い曲を作れるのに、ふざけているような音色やアレンジを平気でやってのける確信犯です。
彼らの代表作は後年のものになりますが、このアルバムでも才能は溢れ出していて隠せません。
1960年代とは違う、新しい時代のサイケデリック・ミュージックです。
好き嫌いが分かれるアーティストですが、私は全力で推します。

43.Pet Shop Boys - Very

1980年初頭から颯爽と登場して、次々と大ヒットを飛ばした二人組の5作目。
このアルバムも、とても売れました。
エレクトロ・サウンドの軽やかさとダンス・ビートが心地よく、シニカルな歌詞も曲調にマッチしていました。
流行に乗った一発屋のような印象を持っている方がいたらそれは間違いで、彼らが新たな音楽トレンドを牽引したのです。
戦略的であると同時に、芸術的でさえあります。
個人的に好きなジャンルではないのですが、とても良くできていておススメできる作品です。

44.Tears for Fears – Elemental

センセーショナルなデビューからスケールの大きなヒット曲を連続して出し、3作目でロック史に残る名盤「The Seeds Of Love」に到達したティアーズ・フォー・フィアーズでしたが、間もなくバンド内は難しい状態に陥ってしまいます。
結局はローランド・オーザバルがバンドを継続させることになって発表されたのがこのアルバムでした。
前作が良すぎたために、音楽のスケールが小さくなったと感じられるのが残念なところではありますが、音作りは上手いですし、歌の力も健在です。良くできたアルバムであることは間違いありません。
優秀な音楽家の良質なロック・アルバムです。
その後もバンドは継続して(カート・スミスも戻って)良い音楽を届けてくれています。

45.The The – DUSK

1980年代初頭のポスト・パンク、ニュー・ウェイブのうねりの中にThe Theもいました。
個性的で自己主張の強いバンドが多い中で独特の立ち位置を占めていましたが、私の中ではどうしても2番手以降の存在になっていました。
ところが多くのバンドがミュージック・シーンを去る中で、彼ら(実質的にはマット・ジョンソンの独裁バンドですが)は音楽を作り続け、ここに傑作アルバムを届けてくれました。
基本はニュー・ウェイブ基調のポップ・ロックなのですが、ダークでビターでシリアスです。

46.The Afghan Wigs – Gentlemen

グランジのムーブメントの中で知ったバンドですが、なんだか不思議な魅力があって引っかかりました。
いわゆるグランジというよりも、オーソドックスなロック・バンドのスタイルで、ギター、ベース、ドラムがいい感じで絡み合っています。
このアルバムだけしか聴きませんでしたが、メジャーなヒット曲があれば、R.E.M.みたいにもなれたかもというポテンシャルが感じられたバンドでした。
評価は微妙ながら、あまりにも知名度が無いので取り上げておこうかなと。

47.Mercury Rev – Boces

アメリカの根暗なオルタナ・バンドなので、おそらく人気は無いでしょう。人前でファンだと言うのも、ちょっと躊躇われます。
でも、このアルバムは爆音ノイズ、弦楽器、管楽器、サンプリングと盛りだくさんで大暴れしています。
あまり意識していなかったのですが、セカンド・アルバムでした。
凄い新人(北米編)に分類しても良かったのですが、今から並べ替えるのは面倒ですし、あまりメジャーでもないので、個人的な贔屓ということでここにランクインです。

48.BRYAN FERRY – Taxi

彼の得意なカバー・ソング集。選曲が渋すぎて、本当のことを言えば、オリジナルが分らない曲がほとんどでした。
何を歌っても、へにょへにょした感じになるのですが、そこにダンディさとか色気を感じる向きもあるようです。
もう、好きな人だけ聴けばいいという個性が確立されているので、万人にお勧めはしませんが、こういうのに浸りたい夜もあったなぁということで。

49.Phil Colins – Both Sides

1970年代にはリーダーのピーター・ガブリエルを失ったジェネシスを継続する原動力として力を発揮し、80年代にはソロ活動やプロデュース業など多忙を極めながらもヒットを飛ばし続けたフィル・コリンズでしたが、90年代に入るといろいろと上手くいかなくなってきます。
このアルバムは、ソロとしては5枚目の作品。
1981年にリリースされたファースト・ソロ「夜の囁き」のような衝撃は無いものの、あたりまえにハイ・クオリティなアルバムでした。
昔は気に留めなかった地味な曲「I’ve Forgotten Everything」が、年を取った今はなんだか寂しく響きます。

50.DONALD FAGEN – Kamakiriad

1981年にスティーリー・ダンが解散したのを残念に思っていたら、翌年には「ナイトフライ」という傑作ソロ・アルバムが出て、さらに次の年にはこの「カマキリアド」が届きました。
期待値が高すぎたせいか、当時の評価としては及第点という印象でしたが、今聴いてみると肩の力が抜けていて居心地の良さを感じます。
まあ、スティーリーダンに駄作無しということでギリギリ。

話題作・ヒット作なのに個人的には推せなかったアルバム(選外)

Paul Weller – Wild Wood

1970年代末には、ザ・ジャムというバンドでパンク・ニューウェイブの寵児となり、80年代には一転してソウル色のオシャレバンド、ザ・スタイル・カウンシルで他を寄せ付けない地位を確立したポール・ウェラーは、90年代に入るとソロで活動を始めます。
これはソロとして2作目のアルバム。
自分の音楽的ルーツを確かめながらの創作活動だったのでしょう。落ち着いた”いぶし銀”の魅力が漂っています。
ただ、正直に言ってしまえば同時代に出てきた若いブリット・ポップのバンドの方が輝いていました。

U2 – Zooropa

90年代に入ってからのU2には興味を失っていました。
デビューからのファンでしたので、アルバムが出れば買いますが、特にこのアルバムは拒否感が強かったのを覚えています。
良くも悪くも印象が強いので無視できませんが、たぶん今後も聴くことは無いでしょう。

New Order – Republic

1980年代の前半を芸術系の大学で過ごし、サブカルの影響を受けた私にとって、ジョイ・ディビジョンというバンドは特別な存在でした。
バンドのフロントマンであったイアン・カーティスが自殺したことでバンドは解散しましたが、メンバーは音楽を続けることを決意してニュー・オーダーを結成。ファンは歓喜しました。
しかし新しいバンドは、エレクトロ路線で、以前のようなシリアスさやダークさが失われていました。
私は失望したのですが、この変化を受け入れたファンは多く、さらには新たなファンの獲得も上手くいってニュー・オーダーは大成功します。
このアルバムは彼らの6作目。
否定こそしませんが、やっぱり私のタイプではありませんでした。

Depeche Mode – Songs of Faith and Devotion

デペッシュ・モードは、ニュー・ウェイブやエレクトロ・ポップのジャンルで絶大な人気を誇るバンドでした。
けっこうシリアスでダークな面を持つバンドなのですが、どうしてもサウンドが軽いのか、歌声が甘いせいなのか、表層的な感じがしてしまうのが残念なところです。
良いのは分かるのですが、なかなか深入りできませんでした。

Guns N’ Roses – The Spaghetti Incident?

デビュー時点でハードロックの完成形を示していたガンズ・アンド・ローゼズは、過去の自分たちを超えることができずに立ち尽くします。
この時期、様式的な美しさを強みとするハードロックは古臭さを放ち始めていて、「ユーズ・ユア・イリュージョンⅠⅡ」やメタリカの「ブラック・アルバム」が成功したとしても、若いリスナーの関心はグランジやカレッジ・ロックに移っていました。
そんな中で発表された新作は、パンクなどのカバー曲を集めたものでした。
正直なところ、この取り組みはガッカリしました。
アルバムの出来がどうこうではなく、このタイミングでクリエイティビティの低いものを出すのは違う気がしたのです。
ちなみに、ロック・ミュージックとしての出来で言えば、普通に良いアルバムではあります。

Scorpions – Face the Heat

70年代から活動しているドイツのハードロック・バンド、スコーピオンズは、90年代に入っても独自の個性を前面に出してブレるところがありません。
もちろんこれまでも試行錯誤はあったわけですが、今回はアメリカ市場を狙ったポップさは抑えめで、ヘビーでダークな方向に振っています。
ただ、突出した特徴が弱くて、ジャケットのデザインほどのインパクトが無かったのは残念でした。

JACKSON BROWNE – I’m Alive

1970年代に瑞々しい感性で名曲を作っていたジャクソン・ブラウンもすでに40代半ば。
優しい視点で愛情などについて歌いますが、どこか一般論的で切れ味がありません。
歌声は一級品なので、聴いていて心地良いことは間違いありません。
ただ、当時は「どっちでもいい」という印象になってしまい、ほとんど聴きませんでした。

Billy Joel – River Of Dreams

1970年代から80年代にかけて才能を爆発させたビリー・ジョエルでしたが、80年代半ばなると創作意欲は衰えてしまいました。
それでも頑張って作ったのがこのアルバムでしたが、クリエイターとしては終わりを宣言した作品になってしまいました。どうしてこうなってしまったのでしょう。
素晴らしいソングライターが燃え尽きてしまう現実を目の当たりにさせられる、なかなかにショックな作品でした。

UB40 – Promises and Lies

みんな大好きUB40。すでにキャリアは10年以上。相変わらずの安心品質です。
特にこのアルバムでは、エルビス・プレスリーの「好きにならずにいられない」をレゲエ・カバーして、けっこうヒットしました。
ただ、まあそれだけです。悪くもありませんが、通常運転ということです。ベスト盤で十分。

De La Soul – Buhloone Mindstate

オルタナティブなヒップホップ・グループの3枚目。
1989年のデビュー・アルバム「3 Feet High and Rising」に新しさを感じたので、得意なジャンルでは無いながらも少し気になっていたグループでした。
ニューヨーク出身のデ・ラ・ソウルはギャング・スタイルでは無く、自然体で現代的な印象だったのも好印象でした。
ただ、本音を言えば、私はこのアルバムをちょっと退屈に感じてしまいました。うーん、難しい。


ヒップホップ系では、サイプレス・ヒル「Black Sunday」スヌープ・ドギー・ドッグ『Doggystyle』ウータン・クラン『Enter The Wu-Tang (36 Chambers)』アイス・キューブ『Lethal Injection』などを興味深く聴きましたが、今となっては本心からこういう音楽が好きだったようには思えず、どれもが選外となってしまいました。

ソウル、R&B系では、トニー!トニー!トニー!「Sons of Soul」が挙がっていないのは何事かとお叱りを受けるかもしれません。
サラ・マクラクラン「Fumbling Towards Ecstasy」も迷いましたが、これは聴いていなかったので仕方ありません。

ロックでは、コレクティヴ・ソウル「Hints, Allegations, & Things Left Unsaid」は、今からでもねじ込みたいくらいの名盤だとは思うのですが、思い入れという面では弱くて選外でした。ジャケットも好きじゃないし・・・。
スクイーズ「Some Fantastic Place」は好きなバンドなのに、聴き逃していました。

プログレ好きですが、Banco「La Storia」「I Piu Grandi Successi」も聴いていませんでしたし、インダストリアル系では、ペル・ウブ「Story of My Life」もノーチェックでした。

ザ・パステルズ「Truckload of Trouble」は、スタジオ・アルバムでは無かったかもしれませんが、ずいぶん後から聴きました。リアルタイムで聴いていたら、エバー・グリーンな純粋さにやられていたでしょうが、残念ながら選外になってしまいました。

30年前の名盤との再会

ここに挙げていないもので、実は1993年の作品だというものがまだ見つかるかもしれません。
日本盤の発売が翌年だったと言うケースもあるかもしれません。
一応、記憶やCDの記載、Spotifyの年号をチェックしていますが、間違いがあったらスイマセン。

振り返ってみると、若いアーティストが現れて、今後の音楽シーンを塗り替える激動の時期だったことが分かります。
ロックのジャンルでは、グランジやブリット・ポップなどのムーブメントに勢いがあり、ベテランもその影響を余儀なくされていたようです。
アメリカのポップス市場も世代交代の波が押し寄せて、新しい才能が輝きを増してきました。
そうした中、アネクドテンやシルビアン&フィリップのような、プログレの名作が密かにリリースされていたのは興味深いことでした。
若い方にとってはご両親の世代の作品でしょうが、もしもこれがきっかけで興味を持って聴いてもらえたら嬉しいです。

投稿 2023.12.16
編集 2023.12.18

Photo by marina barcelos – unsplash

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