『罪なる舞踏/リック・ウェイクマンの犯罪記録』 リック・ウェイクマン 1977年
また、やりましたね。
イエスに復帰して「究極」という最高傑作の制作にかかわった後、そのままイエスのリズム・セクションを借りて自分のソロを作っちゃうという、省エネ制作。
「ヘンリー八世」の時と同様ですが、このやり方は結果として上手くいっていると思えます。
今回は基本的にボーカル無し(一部入りますが)で、前作「神秘への旅路」以上にリック・ウェイクマンらしさが発揮されています。
クリス・スクワイヤのベースとアラン・ホワイトのドラムは、けっこう個性的なことをやっていて、彼らだと分かって音を追うと、なかなか楽しめるのですが、ちゃんとメインを立てて抑制的にやっています。
前作やイエスでは電子楽器の使用が目立っていましたが、このアルバムではジャケット写真にもあるように、アコースティックのピアノが印象的に使われています。
この電子楽器と生ピアノの使い分けは熟練の域に達していて、実に見事です。
いくつもの鍵盤楽器を駆使して「キーボードの魔術師」と呼ばれていた彼ですが、まさにこの時期は技術的にもセンス的にも最高潮だったのではないでしょうか。
アルバムのテーマは「犯罪」。
前作のようなポップさは薄れてシリアスな曲が並ぶので、一般的な評価は得られなかったかもしれません。
でも、リック・ウェイクマンのファンは、クラシカルでエレガントで少々大仰なこの作風は嫌いでは無いハズ。
個人的には、リック・ウェイクマンを知らない人にも、最初に聴くならこのアルバムをお薦めしたいと思います。
日本盤のCDについている解説は、曲の理解に役立ちます。
全6曲、39分という作品ですが、全ての曲が素晴らしく、感動的です。
投稿:2020.9.12
編集:2023.10.31
Photo by Gabriel Gurrola
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