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『BLAZE OF GLORY』 JOE JACKSON

音楽

『ブレイズ・オブ・グローリー』 ジョー・ジャクソン 1989年

ジョー・ジャクソンのデビュー・アルバムは、何から何までカッコ良かったです。
センスを感じるギターのカッティング、唸るベース、跳ねるリズム。鍵盤楽器の入り方もオシャレでした。
これは凄い才能が現れたと思ったものです。
そこへあの印象的な尖った白い靴のジャケットです。痺れました。

その後も、出すアルバムはどれも音楽センスを感じさせる粋なものばかり。
とても無視することなどできません。

この思いが頂点に達したのは、1982年に発表された「Night And Day」からのシングル「Steppin’ Out」を聴いた時でした。
これは日本でも大ヒットしました。

デビュー時のロックから、少しづつレゲエやジャイブなどの要素を取り入れ、音楽的な幅を示していた彼でしたが、6枚目の「Night And Day」ではエレキギターは影を潜め、デジタルの打ち込みや、サルサを大胆に取り入れました。
もう脱帽でした。

いけない、いけない。
ここではデビューから10年、12枚目の「BLAZE OF GLORY」について書くのでした。

ジョー・ジャクソンにはクラシックの素養がある上に、幅広い音楽的な好奇心を隠さない、求道者の気質を感じます。
なんでも巧くやってのける一方で、この音は彼の音だという強烈な個性に乏しく、器用貧乏なところが損をしているようにも感じられるのです。

もちろん彼独自の個性はあるのですが、どうしても同時代にエルビス・コステロというポップ・ミュージックの天才がいたせいで、いまひとつトップに立てなかった印象なのです。
エルビス・コステロが諸葛孔明なら、ジョー・ジャクソンは司馬懿仲達でしょうか。
センスだけで言えば、ジョー・ジャクソンの方がイケてると思わないでも無いだけに惜しいです。

そんなことを本人が気にしていたとは思いませんが、彼の初期の作品は、どこかイイカッコシイな感があり、肩に力が入っているようにも感じられました。
もちろん、エンタテインメントですから、そのカッコ良さは悪くありません。
カッコつけてくれた方が、聴く方も没入できるというものです。

ただ、このアルバムでの彼は、なんとなくリラックスしているようです。
内容は決してポップで軽やかなだけではありませんが、好きなことを自由にやっている感じが、聴いている方にも心地よいのです。

全12曲、約60分のボリュウムで、曲間にはブレイクが無く、メドレーのように続いて行きます。
アルバム全体を通して自叙伝的なストーリーを描いているので、まとめて、この順番で聴いて欲しいという意図があったのだと思います。
もしも現代にリリースしていたら、サブスク向けでは無いですね。
当時もラジオ向けでは無かったでしょう。あまり売れたアルバムでは無かったような気がします。

冒頭で「どのアルバムもカッコいい」と言いながら、CDラックを見ると、けっこう歯抜けで、多くのアルバムを持っていないことが分かりました。
アーティストによっては、アルバムの出来はさておき新譜が出たら必ず買うというケースと、必ず買うとは限らないケースがありますが、ジョー・ジャクソンは後者だったようです。
彼の器用さは、どんなシチュエーションにあっても上手く機能しそうで、挑戦的なことをやっても、そこに納得感があります。
「キミには何も問題は無いんだ。キミは素晴らしいし、ボクがいなくてもちゃんとやっていけるよ」と、距離を置いてしまえるのかもしれません。
うーん、ちょっと卑屈・・・。

この「BLAZE OF GLORY」は、曲間を無くしたこと以外は音楽的な挑戦は少なく、耳を奪われるような特別にヒットしたシングルも無く、それでも各楽曲のクオリティは高いので、安心して聞き流してしまえるのかもしれません。(ギリギリ褒めてる・・・?)

それにしても、改めて聴いてみて、30年も前にこんなにセンスの良いことをサラリとやってのけていたのかと驚きます。
音楽の先生のようなアーティストです。

今さら、ファンでもなければ聴くきっかけは無いアルバムだと思いますが、音楽を作っている人には良さが分かってもらえるように思えます。

投稿:2020.8.18
編集:2023.11.2

Photo by Su San Lee

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