『デビルズ・アンド・エンジェルズ』 メイレイ 2007年
突然現れて、永遠に忘れ得ない強烈な印象と切ない思い出を残して消えてしまった、幻の恋人のようなバンドの名盤です。
はぁー切ない・・・。
このアルバムの前にもインディーズから1枚アルバムを出していたようで、その頃から音楽ツウの方には注目されていたそうです。
後追いで聴きましたが、こちらは購入には至らない内容でした。
それもこれも、先に聴いた、この「デヴィルズ&エンジェルズ」が桁違いに素晴らしかったせいです。
メジャー・レーベルのワーナーが、マイケミカル・ロマンスの仕事などで知られるハワード・ベンソンをプロデューサーにあてがったのが功を奏したのでしょう。
70年代の歌ものロックの持つ切なく美しいメロディ、80年代の産業ロックとも揶揄された親しみやすいポップさ、90年代以降の洗練されたアレンジや音色選びのセンスなど、美味しいところが詰まりに詰まっています。
アメリカのウエストコースト・ミュージックの輝きが感じられる一方で、イギリス的な寂寥感や跳ねた感じもあります。
時代も地域も超えて、良い曲は良い、のです。
収録曲は、全てシングル・カットできるクオリティ。
演奏に目立った特徴はありませんが、ヴォーカルは伸びやかで気持ちの良い声です。
ちょっと懐かしい感じがする、ある意味、安心感がある作りではありますが、今聴いても、あらゆる世代、あらゆる音楽好きに刺さるのではないでしょうか。
メジャーなヒットに結びつかないのは、ひょっとしたら、この全体的に平均点が高く優等生的なところかもしれません。
無視することのできない突出したオリジナリティや、どうしても自分が応援しなければというようなファン心理が働かないのでしょう。
キーンやシャーウッド、ジミー・イート・ワールドとかあたりが好きな方なら、すでに聴いていらっしゃることでしょう。
聴き比べてみると、メイレイは、そうしたバンドの中でも、キラキラ感が強くて、メジャー受けしそうだと思えたのですが、冷静になってみれば、音の作りが古いと言えるのかもしれません。
でも、そんな分析は今更必要ありません。
自分に都合良く修正された高校時代の気恥ずかしくも甘酸っぱい記憶のように、久しぶりに聴いたメイレイは、昔のままに若く美しく輝いていました。
2000年代、ポップ・ロックの名盤です。
投稿:2020.9.29
編集:2023.10.31
Photo by Matthew T Rader
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