2023年のアカデミー賞主要6冠(編集賞入れて7冠)という快挙を成し遂げた『エブエブ』こと『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を観てきました。
映画館で観る価値のある作品
前評判は高かったものの、公開前の予告編を観た段階ではあまり興味は持てず、「なんだかゴチャゴチャした映画だなぁ」くらいな認識でした。
「でも、ここまでの評価なら観ておくかぁ」と出かけたわけですが、これがなかなか期待以上でした。
私としては、”わざわざ映画館に足を運んで、2時間近く身動きできない状態で観る価値はある映画”という評価です。
ストーリーは映画解説などにある通りです。
私も年を取ったせいか、”自分が選ばなかった人生”について考えることがあり、この映画のテーマは刺さりました。
設定や物語を凌ぐ魅せる技術
ただ、異世界転生やメタバース、人生一発逆転などの設定は、日本のコンテンツでは最近よくあるものなので、特に新鮮だったわけではありません。
(アカデミー会員の大人たちには新鮮だったのかもしれませんが・・・。)
物語はシンプルなSFものです。
子供向けと言えるような悪ふざけ感や下品さもあり、そこは好みが分かれそうです。
さらにオチも見え見えで、眠気を誘うようなしつこさもあるのですが、そうしたところも含めて、非常に現代的でした。
特に良いと感じたのは、俳優の演技、衣装や背景、編集、映像効果などが緻密に作り上げられているところです。
映画という表現手法を駆使した作品と言えると思います。
ここにアメリカ人の大好きな家族愛や差別・偏見問題のエッセンスをちりばめると、アカデミー受けする作品に仕上がるわけです。
若い人は映像演出の凄さに、シニアは設定の面白さに魅かれることでしょう。
何十年も名作として語られ続けることは無いでしょうが、今、観ておいて損はしません。
表現の新時代
完全に脱線するのですが、「ジャンプ+」で連載している『ダンダダン』(龍幸信)という漫画があります。コレ、めっちゃ凄いなぁと感じるのです。
設定や物語は、悪く言えば過去のどこかから再構成したようであり、作者のご都合主義で展開するのですが、良く言えば漫画的な自由さとダイナミズムがあって、読者を楽しませる要素に満ちています。
そんな物語に対して、絵はとてつもなく上手く、キャラ作りやセリフ、コマ割りなど全てが素晴らしく、読んでいてグイグイ作品の世界に引き込まれます。
生まれた時から優れたマンガを読む機会があり、作画の技法もデジタルを駆使している作家さんなのでしょうか。表現に対する基礎点がそもそも高いところから始まっているように感じられます。
マンガであれ映画であれ、昔から続いている表現だと思っていたら、すでにセンスや技術のレベルが変わってしまっている、ということなのでしょう。
今のハイセンスなクリエイターの手にかかれば、日本昔話や童話でも凄いエンタメに生まれ変わらせることができるのかもしれません。
観るなら今
戻りますが、『エブエブ』こと『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は、決して子供だましの退屈な映画ではありません。
アカデミー受けを狙ったあざとい作品でもありません。
現代的な設定を最先端の表現で面白く演出した、楽しい映画です。
配信やテレビ放送を待つのではなく、今、映画館でお楽しみいただくことをお勧めします。
もう、配信やパッケージが出てました。
投稿:2023.3.14
編集:2023.11.5
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