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『DESIRE』 TUXEDOMOON

音楽

『デザイアー』 タキシードムーン 1987年

1980年にレジデンツが始めたラルフ・レコードから「Harf-Mute」を出した後、デビュー前に発表していた「NO TEARS」を含めて制作された初期の代表作です。
前回のコラムで紹介したベスト盤には、ここから3曲が選ばれていました。

1曲目の「East/Jinx/…/Music#1」は、いきなり難解でシリアスな大作。
アルバム冒頭に15分弱もある実験的な曲を持って来るあたり、ひねくれているのか自信家なのか。
単調なベースに合わせて、管楽器が気怠いメロディを奏でる導入部。
テンポが上がってバイオリンやヴォーカルも加わる展開部は、繰り返されるテーマに情感が高ぶってきます。
一転して、機械音にシンセやベースなどを合わせてゆく後半は、無機的でアンビエントな雰囲気。
ベスト盤では、歌の無い後半の5分程がカットされて10分以内になっていましたが、こちらのフル・バージョンの方が、タキシードムーンらしいと感じられます。

2曲目は初期のバウハウスや後期のジャパンを思わせるデカダンな曲。
聴きようによっては、チープな恐怖映画の主題歌のようでもあります。

3曲目にディーヴォニューオーダーを思い出させるようなエレクトロ・ポップが挟まりますが、ポップとは言ってもどこか陰湿な暗さがあります。

4曲目はタイトル曲の「DISIRE」。
商業主義にまみれた世の中を風刺するような歌詞で、比較的に分かりやすい曲。

5曲目の「Again」は、その後、シングル「WHY IS SHE BATHING?」で「Ninotchka」のB面になります。
暗く、暗澹たるイメージの曲で、これをヨーロッパではなく温暖なアメリカの西海岸のバンドが作ったということに不思議さを感じてしまいます。

6曲目以降も、様々なタイプの曲が、一貫して根暗なオーラを纏って展開されます。
最後の「NO TEARS」は、東海岸側のポストパンク、ニューウェイブな雰囲気で、かなり違和感があるのですが、いくらジョン・ケージが好きだとか言っても、この時代の若いアメリカのアーティストが、ポスト・パンクのムーブメントに影響を受けないハズはありませんから、こういう曲が生まれるのは当然のことだったのでしょう。
デビュー・アルバムはミニマム・ミュージック的なコンセプトだったために、パンクっぽい曲は入れられなかった(?)ものの、どうしてもフル・アルバムに入れておきたいと思ったのでしょう。
ただ、ここでも取ってつけたような印象にはなっていますが・・・。

改めて聴いてみて、こういう音楽が自由に発表されて、それなりのファンを獲得していたというのは、良い時代だったんだなあと思います。
この時代にSpotifyがあったら、どんなに素晴らしかったことか・・・。

昔から、こういうアーティストを発見するのを喜びにしていたのですが、ここ最近は、Billie Eilish や The 1975 などが受け入れられているのを嬉しく思い、いい年をして夢中になっています。
現在進行形で、繰り返し聴いているのは、Rina Sawayama 。
今でも、こういう才能に出会うとワクワクします。

最後、脱線しましたが、回収せずに終わります。

Spotifyでは、1978年の作品とクレジットされていますが、それはシングル・レコードの「DISIRE」が発売された年で、フル・アルバムとしては「Harf-Mute」(1980年)の後ではないかと・・・。

「DISIRE」にも「ベスト盤」にも入らなかった初期のシングルは、このへんで聴けます。

投稿:2020.6.23
編集:2023.11.13

Photo by Jason Schjerven – Unsplash

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