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『SKYSCRAPER』 DAVID LEE ROTH

音楽

『スカイスクレイパー』 デイヴィッド・リー・ロス 1988年

正直なところ、デイヴィッド・リー・ロスというヴォーカリストは、好きな感じではないのです。
陰と陽で言えば、徹底的に陽の面を体現する彼のスタイルは、実にアメリカ的です。
ハードロックの垣根を超えてポップ・アーティスト的な人気を誇ったのは、彼のこの個性のなせる技でしょう。
私のような自己嫌悪の固まりのイジケ虫には、あまりにも眩しすぎて、嫌悪感を持ってやっと精神のバランスを保てるというものです。

この「スカイスクレイパー」は、前のソロを継承する形で作られた2作目です。
前作と同様に、スティーヴ・ヴァイのうねうね変態ギターとビリー・シーンの高速ベースに能天気ヴォーカルが乗っかって、「ファイト―!」「いっぱーつ!」とやらかしてくれています。
こんな調子で「ジャスト・ライク・パラダイス」というシングル・ヒット曲まで出すのですから流石です。

ただ、前作よりもデイヴィッド・リー・ロスのコントロール下にあったのか、キーボードが多用され、前作にあったジャム的な化学反応よりも、統制された曲作りが重視されているように感じられます。
まあ、ヴォーカリストのソロですから、こういうものだろうと納得はできるのですが、期待していたものとは違っていました。

曲は良くできています。歌も演奏も申し分ありません。
マンネリと言ってはいけません。これが彼のスタイルなのです。
ただ、これだけのプレーヤーをバック・バンドのような扱い方をしたのではもったいなさすぎです。
私がスティーヴ・ヴァイビリー・シーンに寄り過ぎているのかもしれませんが、やはり、この二人が活躍した方が面白いものができたと思ってしまうのです。

このユニットが終わった後、スティーブ・ヴァイは「パッション・アンド・ウォーフェア」(1990年)を発表します。
これは、変態性が抑えられて超カッコイイ傑作アルバムでした。
ビリー・シーンは、ハイテクだけれどポップな曲をやるロック・バンド、ミスター・ビッグを作って、ファースト・アルバム「ミスター・ビッグ」(1989年)を発表。その後もヒットを飛ばし、大成功を納めます。
ヴァン・ヘイレンは、ディヴッド・リー・ロスの穴埋めに苦労するかと思いきや、男前のサミー・ヘイガーが加入してさらに人気が広がり、全米トップの常連にまで成長します。

この頃のデイヴィッド・リー・ロスは、クオリティが低かったわけでも、売れていなかったわけでもないのですが、なんとなく負けた感があったかもしれません。
1991年にメンバーを変えてソロ第4弾を出しますが、これは私は買いませんでした。

「スカイスクレイパー」は、ディヴッド・リー・ロスが、自身のスタイルを追求して作り上げた、ひとつの到達点です。
私とは性格的に相容れませんが、拍手を送ります。
これからも、売れようが、売れまいが、時代の波長と合わなくなってきたと感じようが、ジャンプやハイキックがきつくなってこようが、このスタイルを貫いて、いい曲を作って、エンターテインメント・ロックを突き進んで欲しいです。

1954年生まれかぁ・・・。頑張れ、ダイヤモンド・デイブ




投稿:2020.8.9
編集:2023.11.5

Photo by  Steve Bruce – Unsplash

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