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『The ConstruKction of Light』King Crimson

音楽

『ザ・コンストラクション・オブ・ライト』 キング・クリムゾン 2000年

1990年代後半、ヌーヴォー・メタルを自称していたキング・クリムゾンは、スタジオ盤『Thrak』とその前後のライブ盤(『VROOOM』『B’Boom』『VROOOM VROOOM』*1995年、1996年のライブ。リリースは2011年)を残して立往生してしまいます。
個性的で実力者揃いのダブル・トリオの面々はそれなりに忙しく、またロバート・フィリップの言いなりにもならず扱いにくかったのでしょう。知りませんが。
それだけに緊張感のある素晴らしいライブを残してくれていたのですが、結局はスタジオ盤は『Thrak』1枚を残しただけでダブル・トリオは終了してしまいます。


この『The ConstruKction of Light』では人数を絞って、ロバート・フリップエイドリアン・ブリューパット・マステロットトレイ・ガンという4人編成になりました。
この間に何があってこういうメンバーになったのか、CDには解説が付いているのですが字が小さくて読めません。
なんにしても、キング・クリムゾンで演奏したいミュージシャンはいくらでもいるでしょうから、ロバート・フィリップはその時の方針に合わせてメンバーを収集すればよいのでしょう。
今回はロックな実力者を集結させました。
(彼に言わせれば、自分がメンバーを集めるのではなく、キング・クリムゾンという音楽が必要なミュージシャンを決めるのだそうです。)

音の基本方針は変わらず、ヌーヴォー・メタルを進化させ、さらに良い曲を作ろうと考えていたのではないかと思えます。
新しい時代のメタルは、いわゆる抒情性を排除して、どこまでも硬く冷たいものでした。
リズムは重く激しく、ギターの音は狂気を帯びています。
見た目は怖くてもやってるロックは”エモい”連中とは全く違って、一見礼儀正しい常識人なのに実は凶悪という感じでしょうか。
本当に恐ろしいのはこういう連中なので、決して心を許してはいけません。

キング・クリムゾンは、ともすればコンセプトやテクニックに関心が行きがちで、このアルバムでもそういう魅力があるところは否めないのですが、この鬼気迫る演奏の前には言葉を失いました。
心を病むとか絶望するとかの人間性が入り込むレベルではなく、圧倒的な猛威を振るう自然界の暴力が繰り広げられているかのようで、ちっぽけな私はただ立ち尽くすことしかできません。

今回の売りポイントは、『Larks’ Tongues in Aspic Part IV』が収録されたことです。
こんなタイトルが付いた曲があったら、オヤジ・ファンは買わないわけにいきません。
そして、実際にそれは期待を裏切ることのない、聴いていて怖くなるほどに凄まじい曲になっていました。

しっかり構想が練られて、メンバーの技量も申し分なく、演奏は凄まじい上に話題性のある試みもしています。
個人的には、エイドリアン・ブリューの歌がダメなのですが、それも少なめですし、聴けば聴くほど良くできています。
なのですが、なんだかちょっと受け入れにくい音楽でした。
というか、音楽の方が人を拒絶しているようにさえ感じられました。
ギターの運指練習のようなポリリズムが受け入れられないというのは、少しあるかもしれません。
認めたくありませんが、年齢的に長時間の緊張に集中しきれないということもあるかもしれません。
プログレというよりも、ジャズ・ロックや現代音楽に近いヘビー・メタルです。

70年代のアルバム『Larks’ Tongues in Aspic』には、タイトル曲以外に『Book of Saturday』や『Exiles』という切なく美しい曲がありましたが、30年後の『The ConstruKction of Light』にはそうした抒情性は無く、どこまでも硬質で冷徹です。
これが21世紀なのでしょうか。ヌーヴォー・メタル恐るべしです。
若い人はどう聴くのか、知りたいと思いました。

CDとSpotifyでは、収録曲に少し違いがあるので、こっちも紹介しておきます。
(これはCDで持ってないのですが。)

デヴィッド・ボウイ『Heroes』のライブが聴けます。

投稿:2020.4.19 
編集:2023.10.23

Photo by Pawel-czewinski on Unsplash

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