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『Is this the life we really want?』Roger Waters

音楽

『イズ・ディス・ザ・ライフ・ウイ・リアリー・ウォント』 ロジャー・ウォーターズ 2017年

前作から25年経ったとは思えないほど、相変わらず見事なロジャー・ウォーターズ節が炸裂するアルバムです。
ナイジェル・ゴドリッジという気鋭のプロデューサーを起用したことが成功したように思えます。
また、これまでのような大物ミュージシャンではなく、ジョニー・グリーンウッド(レディオヘッド)など比較的若いミュージシャンを巻き込んだことも、クオリティを高めることにつながったように思えます。
彼のソロの中では、ベストでは無いでしょうか。

アルバム全体をまとめるコンセプトはありますが、ストーリーを聴かせてゆくというよりも、各曲ごとの作りが良くなった気がします。
単に昔より音がいいので楽曲が際立って聴こえるのかもしれませんが、いずれにしてもロジャー・ウォーターズの良いところがしっかり出ています。

ロジャー・ウォーターズと言えば、効果的なSE使い、ソウルフルな女性ボーカル、味のある緩急がついたボーカル、アコースティックで耳を澄まさせておいてエレクトリックなサウンドで感情に揺さぶりをかける、という感動を作り出すテクニックが持ち味です。
それに、アルバム全体で時々繰り返される主題が付けられたら、もう、ピンク・フロイド時代にやられてしまっているファンとしては抵抗できません。
これって、若い人にも効くのでしょうか。ある種の発明品でしょう。

70歳を超えて、今も怒りと喪失感をエネルギーに問題提起を続ける生きざまは大したものです。
それもこれも、『THE WALL』のライブが当たって大儲けできたことが大きかったのでしょう。
自信がみなぎっています。

ジャケットは、黒塗りされた書類。
そこから消されずに残った僅かな単語を組み合わせると「Is this the life we really want?」の文字が読めます。
日本語のタイトルこそ付きませんでしたが、直訳すると「これが我々が本当に望んだ人生なのか?」でしょうか。(樋口一葉『たけくらべ』の一節「これが一生か、一生がこれか」を思い出しましたが、このアルバムとの関係はありませんね。)

制作された2017年と言う時代的な背景も重要ですが、今(2020年4月)の日本で改めて、この現状への怒りに満ちたアルバムに耳を傾けるというのも意味があるように思います。

この作品を経てロジャー・ウォーターズは、コロナ禍を過ごし、ウクライナ戦争を目の当たりにし、2022年にはライブ『This Is Not a Drill』を始動させます。
全てに賛同はできなくても、表現者としてリスペクトせずにはいられません。

THE DARK SIDE OF THE MOON REDUX
Full album available October 6th

投稿:2020.4.10 
編集:2023.10.23

Photo by utsav srestha – Unsplash

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