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『NO EARTHLY CONNECTION』 RICK WAKEMAN

音楽

『神秘への旅路』 リック・ウェイクマン 1976年

出だしのシンセから独特のテーマに引き込まれ、随所に登場する美しいメロディや凝ったアレンジにウットリして聴き入った、思い入れの深いアルバムです。
40年以上も前なんですね。年を取るわけです・・・。

レコードにはアルミ・シートが付いていて、それを丸めて中央の地球に合わせて立てると、リック・ウェイクマンがカラフルな鍵盤を弾こうとしている絵が現れるというしかけのジャケットなのですが、2003年に再発された紙ジャケ・シリーズでは、そうした点も再現されていて、嬉しかったのを覚えています。
他のアルバムがCD化された時に、なぜかこの「神秘への旅路」はCDにならなかったので、待ちわびていたCD化でした。

イエスの仕事で認められて、ソロ作「ヘンリー八世の六人の妻」も売れたことで、リック・ウェイクマンはアーティストとして挑戦的な試みができるようになります。
そこで手を付けたのが「地底探検」と「アーサー王伝説」。
もともとクラシックの素養がある彼は、ここでオーケストラを率いた大掛かりなアルバム作りやライブを行うようになります。
しかし、さすがに商売的には厳しくなり、仕方なく今度は人数を減らしてバンド形式でやろうということで、このアルバムができたわけです。たぶん。

キーボードが主体であることは当然としても、ほぼ全曲に歌が付いているのは、バンドを意識した作りだからでしょう。
手数の多さは相変わらずですが、クラシカルな旋律よりもポップなセンスが前面に出ていて、ピアノよりもシンセサイザーが活躍しています。

テーマは「未知との遭遇」でしょうか?
よく聴いていた中学生時代の私でも、「スペースマンが真実を知っている」とかいう歌詞は幼稚な感じがしましたし、SFアニメの効果音のような音や、大袈裟な盛り上げは気恥ずかしさを感じないわけではありませんでした。
でも、そんなネガティブな気持ちは、センチメンタルなメロディが帳消しにしてくれるのです。

ライブなどでこのアルバムの曲を演奏することが無いのは、コンセプト・アルバムとしての性格を重視しているからなのか、バンド名義だからなのか、実は本人的には思い入れが無いのか分かりませんが、曲の出来は良いですし、アルバムとしての完成度が高いレベルにあることは間違いありません。

その後、アラン・パーソンズ・プロジェクトが登場すると、私の中にあったこのあたりのニーズは、アラン・パーソンズ・プロジェクトに移行してしまうわけですが、それは別の話し・・・。

このアルバムが発売された1976年と言うと、イエスが名盤「究極」を発表した年です。
リック・ウェイクマンは、ちゃっかりこのイエスに復帰していて、これまた素晴らしい演奏を聴かせてくれています。

「神秘への旅路」は、リック・ウェイクマンの創作意欲が抑えられない時期に、キーボードの機材的な発展にも恵まれ、持ち前のテクニックも存分に発揮された傑作アルバムです。
恥ずかしがらずに聴きましょう。

なにせ中学時代ですから、レコードがすり切れるくらい、何度も何度も聴きました。
ダサくても、やり切ってしまえばカッコイイのです。

投稿:2020.9.11
編集:2023.10.31

Photo by Ole Witt

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