PR

『OLIAS OF SUNHILLOW』 JON ANDERSON

音楽

『サンヒローのオリアス』 ジョン・アンダーソン 1976年

『リレイヤー』(1974年)をリリースした後、充電のためか発電のためか、イエスは各メンバーがソロを制作しました。
ジョン・アンダーソンのソロは、他のメンバーに比べてリリースが遅かったこともあり、ファンの期待は高まりました。そして、その作品『OLIAS OF SUNHILLOW』は、見事に期待に応えるものでした。

1970年代の中後期には、プログレッシブ・ロックを代表する名盤がいくつもリリースされました。
一方で80年代に向けて音楽トレンドは大きく変化しつつあり、プログレ・バンドは方向性の変革に取り組まざるを得なくなっていました。
実際、ELPは解散し、キング・クリムゾンは活動を休止、ピンク・フロイドロジャーウォーターズの独裁体制に移行し、ジェネシスイエスはメンバーのソロ活動を推奨します。

ジョン・アンダーソンのソロ『OLIAS OF SUNHILLOW/サンヒローのオリアス』は、彼の創作した物語を音楽で表現したもので、異国情緒とロマンチシズムに満ちています。
制作にあたっては、作詞・作曲だけでなく、ほとんどの楽器演奏も彼が行ったそうです。
まさに彼の創作意欲と芸術性が発揮された作品です。

なので、音楽の複雑さや演奏の凄さのようなものは期待してはいけません。
その代わり、世界感の構築は見事ですし、奏でられている音の美しさは素晴らしいです。
ヴォーカリストのソロとは思えないほど、総合的に完成されています。
正直なところ、イエス・メンバーのソロ作でおススメできるものは多くないのですが、これはイエスのファンの方にも聴いてもらいたい一枚です。

初期のイエスが他のプログレ・バンドと異なっていたのは、現実世界のリアルや心理を突き詰めてゆくのではなく、時間も空間も別のどこか、美しいファンタジーの世界へ連れて行ってくれるところでした。今で言えば”異世界転生”でしょうか。
ロジャー・ディーンのアート・ワークは、そういう意味でも非常に重要だったのです。

このソロ作は、ジョン・アンダーソンがイエスの中でどのような役割を果たしていたのかを理解する助けにもなることでしょう。

投稿:2020.3.30  
修正:2023.10.27

コメント

タイトルとURLをコピーしました