『ザ・クロス・オブ・チェンジズ』 エニグマ 2 1993年
バブル疲れの日本人を癒してくれたエニグマの2作目です。
前作から3年が経ち、この頃、バブル崩壊した日本人が必要としたのは”癒し”どころではなく、”治癒”でした。
このセカンド・アルバムは、地理的な制約や時間的な縛りを飛び越えるような呪術的な内容で、歌詞も哲学的なメッセージになっていて、妙に時代とマッチしたと思えます。(日本盤には対訳が付いていました。)
無国籍なメロディや、太古のリズム、未来からのデジタル音など、相容れない要素を見事なスタジオ・ワークで結合させて聴かせてくれるエニグマですが、このセカンド・アルバムに収録されているのは、前作以上に楽曲としての完成度が高まった多彩な8曲でした。
第三世界風の曲から、激しいボーカル曲やノイジーなギター・ソロが展開する曲まであります。
捉えどころが無いという感じもありますが、通して聴いてしまうと、これはこれでまとまっているようにも思えるから不思議です。
前作との違いを感じるのは、デジタルからより人間的な情動にベクトルが変わっているところだと思います。
クレジットがエニグマ2となっているのも、前作とは違うバンドであると主張しているようです。
しかも、アルバムの1曲目から『Second Chapter』というタイトルですし。
以前、「ファースト・アルバムしかみんな知らない」というようなことを書いてしまいましたが、訂正させてください。むしろ、こちらの方が有名曲がありました。
2曲目の『The Eyes Of Truth』や3曲目の『Return To Innocence』、7曲目の『Age Of Loneliness』は、どこかで聴いたことがあるという人も多いでしょう。
すでにヒーリング・ミュージックのジャンルでは無いように思えます。
BGMにされることを許さない、聴きごたえのあるアルバムです。
投稿:2020.4.6
編集:2023.10.27
Photo by Jeremy Perkins – Unsplash
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