『5』 ソフト・マシーン 1972年
ソフト・マシーンのアルバムは、7作目までタイトルらしいタイトルがありません。
1作目は『The Soft Machine』、2作目は『Volume Two』、それ以降は『3』『4』『5』『6』『7』と続き、それ以降はタイトルが付くようになります。
デビュー時はヒッピーの好むサイケデリック・ミュージックでしたが、自由を求める感性は既存の音楽から逸脱し、演奏力の高さも相まってどんどんフリー・ジャズのようになってゆきます。
サイケデリックとジャズ・ロックが良い具合だった初期には、”カンタベリー派の代表”と呼ばれてたりしていました。
この『5』は、サイケ色がすっかり薄れて、すっかりジャズ・ロック化した時期のアルバムです。
ロバート・ワイアットは、もうここにはいません。
展開されているのは前衛的なジャズで、ロック・ファンが足を踏み入れると困惑してしまうでしょう。ギターの音とかしませんし・・・。
今、改めて聴いてみて、その迫力ある演奏と芸術性に打ちのめされています。
エルトン・ディーンの管楽器とマイク・ラトリッジの鍵盤が印象的ですが、リズム隊もしっかりしています。
音はシリアスでダークで実験的。
抒情性とか人間的な情感よりも、知的で冷徹な印象です。
デートのBGMには向いないでしょう。
ロック好きの私のCDラックには、ジャズのアルバムもけっこうな数は入っているのですが、こうして聴いてみて、「ビッグ・バンドやスタンダードものよりも、こういうタイプの方が好きなんだな」と思えました。
暗いだの冷たいだのと書きましたが、そのクールさがものすごくカッコいいです。
大人の方なら、ひとりになって、電気を消して、ウィスキーを用意して、できたらちょっといい音響装置で、ちょっと大きめの音量で、この音楽と自分をシンクロさせてみて欲しいです。
投稿:2023.3.28
Photo by Franck V. on Unsplash
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