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『COLORBLIND』 ROBERT RANDOLPH & THE FAMILY BAND

音楽

『カラーブラインド』 ロバート・ランドルフ&ザ・ファミリー・バンド 2006年

ちょーカッコいい。
ファンキーなロックが嫌いでないなら、ロバート・ランドルフ&ザ・ファミリー・バンドを好きにならない理由はありません。
日本ではメジャーになりにくいタイプのアーティストだとは思いますが、聴けば必ず響くはず。

なんて書き始めたものの、実はあまり彼らについては知りません。
HMVのフリーペーパーのレビューで興味を持ったのが購入のきっかけだったと思いますが、その他で彼らについての情報を耳にすることも無く、いつの間にか忘れていました。
改めてCDを再生して、やっぱりこういうの好きだなーと感慨にふけっているところです。

ロバート・ランドルフは、教会でペダル・スチール・ギターを学んだそうですが、いわゆるファンク・ミュージックと出会ったのは大人になってからだというから驚きです。
音楽のベースは、いわゆるブルースやファンクで、そこに教会で培ったゴスペルのパワフルなソウルが乗っかってくるのだと思ったのですが、そういう類型的なことでもなさそうです。
ハードロックも、ファンクも、どっちがベースということは無く、しっかり同じような比率で混じり合っているようです。

脱線します。
昔、会社勤めをしていた時に、「e-kara」というカラオケの玩具をアメリカの玩具会社に売り込みに行ったことがありました。
日本では大ヒットしたものの、アメリカでは短命で終わってしまった商品でした。
そしてこの商品を発売にこぎつけるには、文化の違いを感じる壁がいくつもありました。
この商品は、楽曲を別売りのカートリッジで提供する形を取っていたのですが、選曲は楽しさと難しさを感じる仕事でした。

商談はアメリカの北東側で行われることが多かったのですが、著作権の確認などで中南部も含めて各地を訪れました。
日本で触れることができるアメリカのヒット曲というのは、東海岸か西海岸の都会で好まれているものがほとんどで、地域や世代によって、他にもカントリーやフォーク、ゴスペルなど、幅広い音楽が親しまれているということは、当然、理解していました。
理解はした上で、それでも子供向けの商品なので、ヒットチャートの上位から選べば間違いないだろうと思っていたのですが、いざ選曲したリストをアメリカの玩具会社に見せると、一筋縄では行きません。
「歌詞が PARENTAL ADVISORY だからダメだ」という納得できる理由もありましたが、「バックストリート・ボーイズはいいけど、インシンクはもうダメだ」など、担当の好みとしか思えない意見なども出始めて、アメリカ側でも意見がまとまりません。

プライマル・スクリームがシングル・カットした「Swastika eys」を選曲したところ、露骨に嫌な顔をされました。これは、良識あるアメリカ人の普通の反応ということなのでしょう。英語の苦手な日本人の選曲ということで大目に見てもらいましたが、確かに玩具売り場で売るには好ましくなかったと思います。もちろん、ボツになりました。)

こうしたやりとりの中で、リアルに感じたのは、クリスチャン・ロックというのが、ひとつのカテゴリーとして存在していることと、カントリーが(新旧含めて)とても強いということでした。
頭では分かっていたつもりでいたことですが、肌感覚としては全く足りていないことがはっきりしました。

また、今になって改めて思うのは、ブラック・ミュージック(この言い方も見直されるかもしれませんが)は、ジャクソン5のような過去の曲以外、選曲されにくかったことです。
当時は、かつてディヴィッド・ボウイがインタビューで「MTVで黒人アーティストがフューチャーされることが少ない」と発言していたことも、現在のような Black Lives Matter についても意識せずにいましたが、根深いところでそうしたアメリカの文化にも触れていたのかもしれません。

最終的には、オールディーズを多く含むコンサバティブな内容となり、私の好みとは少々違ったカートリッジになったのですが、商談は成立し発売の目処は立ちました。
そこで、「今後も選曲をするなら私をアメリカに駐在させて欲しい」と申し出たところ、あえなく却下され、以降はアメリカ人が選曲することになりました。(まあ、その方が間違いないです。)

戻ります。
この「カラー・ブラインド」は、ロバート・ランドルフ&ザ・ファミリー・バンドの中でも、持ち味のスチール・ギター以上に歪んだギターが主張してくる、ロック色の強いアルバムです。
古い世代の人はスライ&ザ・ファミリー・ストーンの影響を感じるでしょうし、若い世代の人はザ・ヘヴィーなどを思い出すかもしれません。
それにしても、ここまでハードで粋なファンク・ロックは、なかなか貴重です。
なんとエリック・クラプトンデイヴ・マシューズが参加した曲まで入っています。

さまざまな音楽を見事にミックしたと書きましたが、1曲目の「Ain’t Nothing Wrong with That」では、こんな歌詞が歌われています。

Whether it’s rock and roll or old soul (It don’t matter)
Disco, Calipso (It don’t matter)
―略ー
East or west coast (It don’t matter)
Down south or up north (It don’t matter)
ー略ー
Red, yellow, black or white (It don’t matter)
We all gettin’ down tonight
I’m tellin’ you
ー略ー

そして、アルバムのタイトルは「カラーブラインド」(色覚異常)。

20年近く前のアルバムですが、今、改めて聴いてみる価値のあるアルバムだと思います。


ロバート・ランドルフ&ザ・ファミリー・バンドは作品数は多くありませんが、どれも外れなしです。
ロック好きなら、知っていて損はありません。



投稿:2020.7.24
編集:2023.10.29

Photo by  Rob Sarmiento – Unsplash

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