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『Still Life』Still Life

音楽

『スティル ライフ』 スティル・ライフ 1971年

どのような経緯でこのバンドを知って、アルバムを入手したのか、全く思い出せません。
1960年代後半からバンド活動を始めたマーティン・キュアーなる人物が、メンバー・チェンジを繰り返すたびにバンド名を変更させる中で、奇跡的に生まれた傑作アルバムです。

どんな音楽かといわれると形容しにくくて、英国的な抒情性が感じられるアート・ロックとか、煙に巻いたような言い方になってしまいそうです。
オルガンの響きが印象的なので、プログレッシブ・ロックの文脈で語られることが多いかもしれませんが、いわゆる重厚長大ものではありません。
スティル・ライフ名義では、この1枚しかアルバムを残していないようですし、なにせ情報が無い謎のバンドなのです。
もう、純粋に音を聴くしかありません。

1970年代前半はプログレの名盤が次々と発売された頃ですが、アメリカは戦争中でしたし、沖縄はまだ本土復帰しておらず、横井正一さんはグアム島に身を潜めていました。
すごく昔のように感じると同時に、ジョン・レノン「イマジン」、ローリング・ストーンズ 「ブラウン・シュガー」、キャロル・キング 「イッツ・トゥー・レイト」など、今聴いても古さを感じない曲もこの頃には数多く誕生しています。

ただ、スティル・ライフのこのアルバムは、今聴くと古さを感じるタイプですね(笑)。
おそらく要因は録音で、音がクリアではなく、こもった感じです。
ただ、そうした当時の技術的なことは仕方ないとして、もっと俯瞰した視点でアルバム制作をプロデュースできたら、これ以上の仕上がりにすることができたのではないかというポテンシャルを感じられるのです。
それくらい各曲の出来は良く、これ1枚しかアルバムが残っていないのは残念でなりません。

バンド・サウンドを重視したのでしょうが、せっかく抒情的な世界観と切ない系のメロディが素晴らしいのに、オルガンはジャンジャカ鳴らすし、ベースはブンブン唸るし、ヴォーカルはシャウトするし、全力少年すぎです。
もちろん、そこが魅力的だということは言えます。
ピーター・ハミルに似た感じのマーティンのヴォーカルとテリー・ハウエルズのオルガンが魅力なのは勿論ですが、個人的にはボリュウムを上げて迫ってくるグラハム・エイモスのベースに耳を奪われます。

音が特別にキレイなわけでも、難しい演奏をこなすわけでもありません。
ただ、曲は良いのです。
随所にグッとくるメロディの輝きがあります。
もっとやりようがあったのではないかと思ってしまうものの、この粗削りさが魅力となって爪痕を残すからこそ、こうして私のように彼らのことが気になって仕方がないリスナーがいるのでしょう。

万人向けのお薦めアーティストというわけではありませんが、イギリス系のロックに関心がある方なら、一度聴いてみてもいいかもしれません。
この記事のトップ画像がドクロである理由は、CDを買っていただければお分りいただけます。



投稿:2020.9.16 
編集:2023.10.31

Photo by Andrés Gómez

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